ヌメラーからの挑戦状2
〜幻の砂浜を求めて〜


先日、あいも変わらず日記の更新をしていた所、とても興味深いメールが届きました。そのメールは、とても不思議な世界に僕を誘う招待状だったのです。今回はとってもとっても大変だったチャレンジのお話です。

全ては以下のようなメールが我がサイトの読者さんから送られてきたのが始まりでした。

新着メール
件名:挑戦状です
送信先:patonumeri@hotmail.com
送信元:あるヌメラー

 

こんにちわ、patoさん
<中略>

そこでpatoさんに挑戦状です。
patoさんがお住まいの広島県の隣である岡山県。
その岡山県の邑久町という場所に「ちどりが丘浜海水浴場」という海水浴場があります。

実はこの海水浴場は知る人ぞ知る場所で、
「幻の海水浴場」などと呼ばれています。

是非ともpatoさんに行って取材してもらい
どんな海水浴場か報告してもらいたいです。
是非ともお願いいたします。

 

あるヌメラー



なるほど、またもや僕への挑戦状ですね。前回の挑戦状では「男たちの希望となる橋を探せ」という指令を頂き、姿も見えぬ指令者からの無理難題をクリアしつつ、「巨根橋」なる壮大なセクハラとしか思えない橋を発見しました。あれはあり得ないチャレンジでしたね。歩きすぎて死ぬかと思った。

そして今回の指令は「岡山の海水浴場」それも「幻の海水浴場」などと呼ばれる場所らしいです。「幻」とはまた魅惑的な名称です。一体どんな海水浴場なのか。

幻というぐらいだから、あり得ないほどの幻を見る海水浴場かもしれません。例えば、その海水浴場に行くと、真冬であるにも関わらず、モー娘。メンバー全員がトップレスで水遊びを楽しんでいるのかもしれません。

海の家ではヤキソバを売っており、それを加護と一緒に食する僕。保田は沖合いで溺れていますが誰も助けません。なっちは僕を砂に埋めようと必死だし、矢口はウンコが我慢できず砂浜に穴掘ってやってます。ハァハァ。

もうね、ゼッタイに辿り着いてみせる。死んでも辿り着いてみせる。ものすごい勢いで出発の準備をし、あり得ない程の早朝から出かける準備。幻の海水浴場に向けて入念な準備ですよ。なんか「トップレスモー娘ぅぅぅぅぅぅ!!」とか叫んでいた。待ってろよ!

とりあえず、地図で場所を確認するとこんな感じ。

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広域図

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詳細図

問題の海水浴場は吉井川の河口付近に存在するようだ。岡山市と川を挟んで対岸にある邑久(おく)町付近に存在する。国道二号線を東にひた走っていれば簡単に到着するだろう。今回は前回の指令と違って指示を書いた紙とかもないみたいだし楽勝だ。さあ、いくぞ。

早朝7時。まだ薄暗い中車に乗り込む。ものすごく寒い。

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いや、車のフロントガラスに雪が積もってるし。白い粉雪が降り積もってるし。もうね、恐ろしく寒い。こんな氷点下になろうかという雪降る気候の中で、海水浴場求めて旅する人間なんて僕ぐらいしかいないだろう。ちょっと誇らしい。

国道二号線を東に向かってひた走る。夏の北海道シリーズで見つけた「珍古堂」の看板に再会する。

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相変わらず品の良さげな奥様が描かれており、その下にズババーンと「珍古堂」このギャップがたまらない。ゼッタイに店主は確信犯だと思う。ちなみに、今回の撮影は新兵器DoCoMo SH251iサーモンピンクカラーのカメラで行っております。画質が悪いのは勘弁な。

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さて、引き続き国道二号線を東へと爆走し、ちどりが丘浜海水浴場を目指す。トップレスモー娘。が住まわす海水浴場へ、いざ行かん!

あっという間に三原市、尾道市、福山市と通り抜け岡山県入りする。そして笠岡市などを通過する。時間はこの時点で9時だった。単調と続く国道の風景に少し飽きてきた頃、

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よく出そうなパチンコ屋を発見。この辺はパチンコ屋の開店が9時らしく、開店直後だった。なんとなく勝てそうな気がする。僕の中の何かが「今打ちに行ったら勝てるよ!」と知らせているようでならない。ウズウズ、打ちたい打ちたい。

というわけで何も迷うことなくパチンコ屋店内へ。カワイイ店員がいてちょっとドキドキ、心ウキウキ。でまあ、スロットルを打つことにして適当に台を選んで座る。

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バシッ!!

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バシッ!!

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ドカーン!!

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パッパパパラララ〜

というわけで、ムチャクチャ出てるんですけど。あり得ないほどコインがジャラジャラと。ハッキリ言って大勝利だね、大勝利。まあ朝一番の段階でコレだけ出てるのだから、閉店まで打ってたらものすごい勝てると思う。明らかに優秀台だしな。もうこうなったら閉店までブンブン打ってだなものすごい金を稼いでやる。よっしゃあー出すぞー!!幻の海水浴場?なにそれ?

いやいや、危ない危ない。あまりの出玉に目的を見失う所でしたがな。一体何しに来たんだか。ものすごい名残惜しいけど、やはり海水浴場を探さねば、と泣く泣く出たコインを換金し、海水浴場への旅を再開します。もっと出そうな台なのになぁ・・・・。

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さらに二号線を東へと爆走し、ついに岡山市入り。この隣の邑久町には目指すべき海水浴場があるわけです。なんかドキドキしてきた。

途中、少し小腹が空いてきたのでコンビニによってオヤツなどを購入しました。なんか、レジのところにマイクベルナルドみたいな外国人がいて、店員さんに必死で話かけてました。カタコトの日本語とも英語とも聞ける言語を必死に喋りかけるベルナルド。なにやら困っているようなのですが、僕には「チクビスイターイ」と言っているようにしか聞こえない。コンビニ店員(生娘)に向かって「チクビスイターイ」とか反則だろ、とか思いながらコンビニを後に。

その後も邑久町を目指して車を走らせるのですが、なんか道を間違えたのに気がつかずに30キロ余り違った方向に走ってました。気がついた時にはあり得ない場所に。「神戸まで150キロ」とか書いてある看板を見たときは背筋が震えたものな。

で、間違えた道をブツブツと文句を言いながら引き返していると、急に腹痛が襲ってまいりました。P4レベルの腹痛です。緊急事態。ちなみに腹痛の危険度を表す尺度は次のとおり

P1 かすかにウンコがしたい(腹痛を楽しめるレベル)

P2 ウンコしたいかも(できることならウンコしたいが、まだまだ我慢できる)

P3 ウンコしたい(ウンコのことしか考えられない)

P4 もう出る(ちょっとでも気を抜いたら実がコンニチワ!)

とまあ、こんな感じなのです。で、その中でも最大のP4レベルの便意が。やばい、下手すると漏らしてしまう。冷静に車の運転とかしている場合ではない。なんとかウンコができる場所を探さねば。

こういう時に限って信号に捕まったり、一車線の道路の前方を遅い車(もみじマーク)が走っていたりする。お前らは俺を殺す気か。

で、平静さを失い、嫌な汗を流しながらも爆走していると、道路脇に大き目のスーパーマーケットを発見。ここならトイレがあるに違いないと駐車場に車を止める。

お尻の方に刺激を与えないように配慮しつつも、小走りでトイレを目指す。売り場の商品なんか目もくれず一直線にトイレ。トイレトイレ。やっとこさトイレを発見し、個室に駆け込む。これが至福のひと時。全ての苦しみからもう少しで解放される安堵に包まれる瞬間だ。さあ、モリモリ出しちゃうぞー。

ぐおおおおおおおおお!!!!便所の鍵が閉まりやがらねえ!!!なんだこの便所は!!

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このように、棒をスライドさてドアが開かないようにする鍵なのだが、根本的に何かがおかしい。そう、このドアは引くドアなのだ。つまり、

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棒が出ていてもドアを引っ張れば開く。いともあっけなく開く。何のためについてるんだ、この棒は。

仕方ないので、便器にまたがりつつ、身を捩じらせて必死にドアを押さえながら用を足す。ウンコを垂れ流しながら、ドアを押さえる姿。情けなくて親には見せられない姿だ。どうなってんだ、このスーパーは。

とにもかくにも何とか排便を済ませ、気を取り直して旅を再開する。

しばらく走っているとついに邑久町入り。いよいよ幻の海水浴場が近くに。

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見渡す限りの田園風景。もうこの場所は海水浴場のすぐ近く。周辺環境としては工場が立ち並び、畑の中に民家が点在するという、おおよそ海水浴場周辺には程遠い環境なのだが、この近くにあるのは間違いない。

地図を見ながら走ること数分。あのカーブを曲がればいよいよ目の前に海水浴場が現れるといった場所に到着。幻の海水浴場。広がる砂浜に、そこで戯れる加護と辻。ああ、なんて素敵なんだろうか。もうドキドキして仕方がない。このカーブの先には一体どんな海水浴場が。そしてどんな素敵な幻を見せてくれるのか。ああ、怖くて曲がれない。でも見たい、曲がりたい。ここまで来て見届けずに帰るなんてできるものか。意を決してカーブを曲がった。

さあ、目の前には素敵な砂浜や海の家が!

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いや、なんにもないんですけど。

なんか普通に川の増水を防ぐために作られた堤防があるだけ。堤防の上を車一台が通るのがやっとの道が延々と伸びているだけ。写真右はブロック状の斜面で、左が海。しかも岸壁みたいになってる。

場所が間違ってるのかな?と何度も確認したのだけど、やはりこの場所で間違いない。地図を見てもらうと分かると思うけど、問題の海水浴場の近くには化学工場がある。上の写真を撮っている僕の背中側にはデカデカとその工場があるのだから、場所はココで間違いない。地図で示された「ちどりが丘浜海水浴場」は間違いなくココだ。でもこんな堤防みたいな岸壁が海水浴場であるはずがない。

一体どうなって・・・・。

なんとなく気になって必死で海水浴所を探すために、堤防上の道路を車で爆走してみたのだけどやはりない。写真奥の場所まで一キロぐらいあるのだけど、その奥まで行ったが見つからない。

というか、戻れなくなった。先はなんか行き止まりっぽいし、Uターンする場所もない。仕方ないので写真のように車一台の幅しかない細い道をバックで帰ってきた。1キロも全部バックで。右は斜面で即転落、左は岸壁というあり得ないほどの危険なバック。死ぬかと思った。

とにかく、ここで考えていてもラチがあかないので、すこしこの、場所からはなれて近隣住民に話を聞いてみる。

寒い中、庭先で作業するオバサンを捕まえて事情を聞く。

「すいませーん、この地図によると、この場所に海水浴場があるはずなんですけど・・・」

と地図を片手に訊ねると、オバサンハはいぶかしい顔をしながら

「アンタ、どこの人ね?」

とか警戒している。考えてみれば無理もない。この周辺は田んぼと古い農家しかないような場所。徹底的に余所者を排除した土地柄だ。そこに見慣れぬものがやってきて、意味不明に「海岸は?」とか聞いてくれば誰でも怪しむ。ここは彼女の警戒心を解くことから始めねば。

「あ、申し遅れました。私は大学で海岸の土壌に関する研究を行ってるものでして、中国五県の海水浴場全ての砂を調べてるんですよ」(大嘘)

「はえ・・・学者さんかえ・・・・」

「ええそうです。それでこの地図にある、ほら、ココ、ココ。あるでしょ。ちどりが丘浜海水浴場ってのが。でも、行ってみるとないんですよ。海水浴場なんてないんですよ」

「そういわれても・・・ウチも海水浴場があるなんて話は聞かないし・・・・」

とオバチャンも困惑顔。どうやら近隣住民もこの海水浴場は認識していないらしい。どうもやはり「ちどりが丘浜海水浴場」なるものは存在しないらしい。

そこで、再度地図上で示された海水浴場の場所に戻り、携帯電話で地図の製造元の会社に電話。海水浴場があると騙されてきた一般人の憤りをぶつけてみる。

「もしもし」

「あーはい、もしもし」

「あのですね、おたくが出してる地図の岡山版のヤツあるでしょ。赤いヤツ。アレの邑久町の部分にねちどりが丘浜海水浴所ってのがあると思うのですよ」

「あー、ありますね、はいはい」

「今まさにその場所に立っているのですが、海水浴場の欠片も見当たらないのですが」

「あ、それ間違いです」

とアッサリ言われました。はい、終了。

幻の海水浴場「ちどりが丘浜海水浴場」は、地図の間違いにより存在そのものが幻だったということでおしまい。見事にオチがつきましたな。

というか、地図でも間違うことってあるのですかね、そういえば、このちどりが丘浜海水浴場周辺だけ異様に地図が不正確のですよ。実際には繋がっていない道が繋がっているように書かれていたり。曲がっている道が真っ直ぐに書かれていたり。民家周辺とか道が入組んでいるのですけど、地図が正確じゃないから迷ったもの。

こういう地図って、実際にアルバイトの人かなんかが走ってみて正確さを追求していると思うのですけど、この周辺だけ明らかにおかしいことから考えても、担当したバイトが思いっきり手抜きをしたかなんかが原因ではないかと思います。それで、その間違いが幻の海水浴場を作り出したに違いない。

でも、いくら手抜きでも海水浴所のない場所に海水浴場って書くことがあるのか。あり得ないような気がするのだが・・・・。大体、この辺の地名とは全く関係ない「ちどりが丘浜」という名前がどこから出てきたのかすら不明。なんかまだまだ重大な謎がこの場所には隠されているような気がする。

とにかく、この場所にいても何も解決はしないし、寒いしで帰ろうと思ったその時。とんでもないものが僕の目に飛び込んできました。

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ちょっと分かりにくいかもしれませんが、堤防の一番端っこのほう。本当に三角州みたいな場所になぜか砂がたまってました。微妙に砂浜があるんですよ。この場所には。ま・・まさか・・・コレが海水浴場というわけでは・・・・こんな場所で海水浴なんて・・・・でも、よく見たら地図の場所も一致してるし・・・・・。

おそらくですね、ここは吉井川が海に流れ込む場所なのです。つまり、川から水が流れ込み、水に流れができる。で、ちょうど堤防の海側の方に突起があり、そこに流れがぶつかるようになっているのです。

そうすると、そこには川の水で流されて来た砂が溜まるようになる。そうして本当に小さな小さな砂浜が形成されるのです。でもまあ、砂浜といっても川から流れてきた砂と同時にゴミもドコドコと溜まっている。かなり汚い砂浜なんです。ゴミだらけの小さな小さな砂浜。

地図会社の人は「間違いです」と言ったけど、僕にはあながち間違いには思えない。きっと、この場所を調査しに来たバイトの人には、この小さなゴミだらけの砂浜が海水浴場に見えたのではないだろうか。ちどりのように小さな小さな砂浜。そして浮かんだ名前が「ちどりが丘浜」だったのではないだろうか。

依頼したヌメラーは、地図に示されている場所に海水浴場がないといった意味で「幻」と表現したのだろうけど。僕にとっては違った。ゴミだらけになりながら必死でもがくチドリのような海水浴場。それこそが僕にとって「幻」の海水浴場なんだ。何だか大切なメッセージが込められているようにすら思えた。

どう考えても、こんな安全地帯みたいに狭くて、ゴミだらけの場所で海水浴なんてできないんだけどね。

それにしても寒かった。氷点下とかあり得ない。

まだまだ挑戦待ってまーす。なるべく中国五県だと嬉しい。
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