ハロウィーン

ハロウィーン

10月31日はハロウィンという良く分からないお祭りみたいなのがあるらしく、街には繰り抜いたカボチャの仮面などが溢れ、魔女っ子のコスプレをした女の子がエッチなことをされるエロビデオがリリースされるなど、微妙な盛り上がりを見せるものです。でも、そこはかとなくぶっちゃけますけど、実は僕、このハロウィンってやつを22歳くらいまで知らなかったんですよ。

確かに当時は、今ですら微妙な盛り上がりであるハロウィンがさらにマイナーな盛り上がりを見せてる時期で、知ってる人のほうが少ないというか外国かぶれというか、とにかく知らないことは罪ではなかったんですよ。

大学生だった僕は、学生食堂で卵かけご飯を食べつつ、友人に「卵かけご飯は世界一、いや宇宙一美味しいと思う、21世紀に残したい料理だね」みたいなことを話していました。時はまさに世紀末、殺伐とした世の中にあって卵かけご飯に一服の幸福を求める、そんな大学生でした。

「ねえねえ!きいてきいて!」

そこに駆け寄ってきたのは同期の女の子で、異常なほどにブスな満子でした。僕も人の容姿をどうこう言えるほどのもんじゃない、むしろ言ってはならない、泥棒が泥棒を批判するのに近い構図があるのですが、それでもあえて言わざるを得ないくらいブスでした。例えるならば、普通レベルの「あ、ブスだね」って感じの人が皆既日食などの天体ショーとするならば、満子さんはグランドクロス、太陽系の全ての惑星が十字型に配置される世紀の天体ショー、その中心に位置する地球が重力の影響を受けて粉々に砕け散る、それくらいのブスといっても過言ではありませんでした。

で、このブス、じゃないや満子さんが何を発狂していたかと言いますと、何でも10月も後半に近づいてきてハロウィンが近づいてきた、同期のみんなでハロウィンパーティーをやろうよ、と持ちかけてきたのです。

僕がいた学部ってのが特性上すごい女の子が少ないところでしてね、華のキャンパスライフとは程遠い少しグレーがかったキャンパスライフでして、しかも山奥過ぎて稀にマムシとかが出没するとんでもない大学だったんですけど、学部内で女の子に遭遇する確率とマムシに遭遇する確率がイコールに近いという、花ざかりの君たちへブサメンパラダイスだったんですよ。

そうなると、やっぱ女の子が少ないから希少価値な訳ですよ、世の中の価値あるものって宝石でも何でも稀少であるってのが大前提なんですよね、金にしてもダイヤにしてもその辺にゴロゴロしてたら全く価値がない。で、満子さん、学部内ではかなりの希少種である女の子ですから、それはそれはモテたんですよ。ありえないくらいモテてた。

メンズノンノって感じの同期のイケメン男たちを次々と食い散らかしてですね、季節ごとに彼氏が変わるっていうんでしょうか、とにかく花から花へ華麗に舞う蝶のようにイケメンたちを食い物にしていったんです。もう、同期のイケメンはそこそこいかれてたんじゃないかな。

もちろん、ブサイクフェイスグループに属していた僕などは全くお目に留まることもなく、ブス満子から「あんなダサいのと付き合うのなんてまっぴらごめんよ」といった差別的な視線を投げかけられてたのですが、なぜかハロウィンパーティなる怪しげな催しに誘われてしまったんです。

実はこの満子さん、けっこうアツい人でして、何がアツいって「せっかく同じ大学の同期になったんだから仲良くしようよ!」とやけに同期の団結を煽るというか、これが高校生くらいだとクラスの団結とかあるんでしょうけど、大学生にもなると結構ドライじゃないですか。なのにことあるごとにイベントごとを企画して団結を深めようとしていたんですよ。

男ばかり30人くらいいる中に満子さん一人女性で飲み会したりとかキャンプに行ったりとか、満子さんはその度にイケメンを引っ掛けて満足気だったんですが、ブサメンな僕らとしては1ミリも楽しくなく、ただ河原に行ってカレー食べてテントで寝るだけですからね、桃鉄でもしていたほうがいくらかマシ、けどやっぱ同期の付き合いって大切ですから嫌々参加してたんですよ。

「今度さ、みんなでハロウィンパーティやろうよ!」

ブサイクタイフーンこと満子さんがハロウィンパーティっていう、当時まだそんなに馴染みがなかったイベント事を持ち出してきたんです。カボチャの仮面みたいなか顔しやがってからに、すごいやる気十分の顔で誘ってきたんです。正直、すごい面倒で行きたくなかったんですけど嫌々参加せざるを得ない状況でした。

そしてハロウィンパーティ当日、同期の面々が大学近くのパーティルームみたいな場所に集結しましてね、僕も友人たちと早めに切り上げて桃鉄しようぜ、今日は99年するぜ、寝かさないぞーとか話しながら会場のドアを叩いたんです。

中に入るといきなり魔女のコスプレをした満子が猛り狂ってましてね、変なステッキ持って右へ左へ大暴れですよ。誰か麻酔銃持って来い!というしかない見事な暴れっぷりだった。魔女と言うよりはゴキブリみたいだった。しかも集結している同期の面々ってほとんどが満子に食い散らかされているいわゆる元カレですから、なんとまあ、表現し難い微妙な空気が蔓延しているんですよ。お通夜みたいな沈痛な雰囲気の中、お互いがお互いを牽制しつつ厳かに飲み食い、そこにコスプレ満子が一騎当千の大暴れ。えいっ!とか言われてステッキで魔法かけられたりしたからね。どうリアクションしていいかわかんなかったよ。

こ、これがハロウィン!

ハロウィンについて全然知識がなかった僕はもう何が何やら。何が楽しいのか全然分からなかった。後から調べて分かったことですが、ハロウィンとはケルト人の収穫感謝祭が起源になっているとか何とか。ケルト人が何者なのか全然知りませんけど、とにかく収穫感謝祭が形を変えて英語圏を中心に広まっていった。

ではこの感謝祭とは何なのかといいますと、ケルト人にとって10月31日が一年の終わりの日に当たり、そこで死者や精霊、魔女などが訊ねてくると考えたそうです。全然関連性が分かりませんけど。で、それらの化け物から身を守るために仮面をかぶったり魔除けの焚き火をしたりするそうです。日本のお盆に近い感覚かもしれません。それがいつしか形を変え、クリスマスと同じノリみたいになったんでしょう。

僕のハロウィン初体験は全く楽しくなく、ある意味化け物がやってくるって部分だけ共通していたのですが、そこで「成敗!」とかやって焚き火で満子を燻せばよかったと思うことくらいしかできませんでした。ハロウィン、全然楽しくない。

ちなみに、ハロウィンパーティの直後、ついにイケメンだけでは飽き足らずブサメンにまで手を出し始めた満子に、図書館の準備室で「私、寂しい」と迫られ焦る僕、さらにそれを聞いた元カレイケメンが嫉妬に狂い、満子までもが「patoのゲスにしつこく言い寄られて困ってたの」とシャブでもしゃぶってシャブシャブしてんじゃねえのってことを言い出し、山奥のキャンパスを舞台に骨肉の愛憎劇が展開したのですが、この話は本論から外れるので続きはWebで!とにかく本論に戻ります。

そんなこともあってか、僕はこれまでハロウィンってヤツに非常に懐疑的な思いを抱いていたんですよ。何も楽しくないしパーティをやってなんになるのか。それに僕らはケルト人じゃないですからね。だいたい、欧米のものを無理矢理日本でやるってのが無茶な話なんですよ。

10月に入るとコンビニなどにハロウィングッズが売られたりするじゃないですか。それも年々ド派手になってきていて、年を増すごとにカボチャのお面がクローズアップ。アベックなんかが深夜のコンビニに仲睦まじくやってきてですね、ハロウィンコーナーで言うわけですよ。

「あ、もうすぐハロウィンだねーみてみてーこれかわいいー」

「そういえば、俺たち、付き合い始めてもう1年になるのか」

「去年のハロウィンパーティーだよね・・・」

「そこで俺と芳江が出会った」

「うん」

「芳江は魔女の格好してたんだよな、かわいくて一目惚れだったよ」

「高志はカボチャかぶってたよね。ずっとかぶってるから変な人って思っちゃった」

「照れちゃって取れなかったんだよ…」

「高志カワイイ!」

「バカにすんなよ!」

「そうやってすぐに照れるところが大好き!」

「ったく!」

「ねえ、来年も再来年も何十年後も、ずっとずっと高志と一緒にハロウィンできるかな?」

「知ってるから?ハロウィンってのは死者が復活してくるってのが起源なんだよ」

「うん」

「もし俺が先に死んだとしても、ハロウィンにはきっと復活して芳江に会いに行く。ずっと一緒にハロウィンを迎えよう」

「高志……私も…私も死んだら高志に会いに行くよ…魔女の服着て」

「バカ!芳江が死ぬなんて耐えられない!そうなったら俺も死ぬよ」

「もう!」

「アハハハハハ」

「ウフフフフフ」

とまあ、コンドームをダースで買っていく、それもベネトンのやつをゴッソリ買って行きプレイがエスカレートしてカボチャとか入れるんでしょうが、なんていうか久々に言わずにはいられない。カップルは死ね!7回死ね!っていう感じなんですよ。いかんせん、日本人ってのはイベントごとに対して悪乗りが過ぎる。クリスマスだけじゃ飽き足らず、西洋の祭りかこつけてセックスしようって風潮がハロウィンにまで蔓延してるような気がするんですよ。

そういった理由と、学生時代の満子さんのハロウィンパーティーの悪夢があってかずっと心の中でハロウィンをスルーしてきたのですが、先日というか今年、決して避けることの出来ないハロウィンが我が家にやってきたのです。10月に合わせて家に化け物がやってくるハロウィンそのものが巻き起こったのです。

異変は10月に入った頃合に始まりました。もう10月だというのに異常に暑い、なんとかならないものかと思いながら釣り番組を見ていたんです。釣りなんて最近ではビタイチやらないんで興味もないんですが、磯釣りに夢中になるその辺のオッサンとかを公共の電波に乗せてどうするんだろうって視点で見るとけっこう面白いんですよ。

「引いてる!引いてる!」

とテレビの中のオッサンが大興奮になった時、なにやら右後方で異様な物音がしました。

ガサガサ

その瞬間に思いましたね、ああ、ゴキブリかと。こういっちゃなんですけど、僕ってばゴキブリとか全然平気なんですよね。だてにゴミ屋敷みたいな部屋に住んでませんから、ちょっとやそっとゴキブリが出たくらいでは全然動じない。動かざること山の如しってなもんですよ。

どうもコンビニのビニール袋に触れたゴキブリがガサガサと音を立ててるみたいなんですが、それがまあ、結構大きい音なんですよね。なんか比較的洒落にならないサイズっぽい音声が聞こえてくるんですよ。

そうなるとね、やっぱ気になるじゃないですか。動じないといってもどれほどの大物ゴキブリなのか知的好奇心から拝見したくなるじゃないですか。で、仕方ないからその音がしているビニール袋を取り去ってみたんですよ。

そしたらアンタ、ムチャクチャ大物、マグロで言うと近海物みたいな極上のゴキブリが燦然と鎮座しておられるじゃないですか。これにはさすがの僕も唸るしかなかったね。「すげえ、大物だ…」とゴクリと唾を飲んだ瞬間、テレビ内でも大物が釣れたらしく「大物だ!」とオッサンが大はしゃぎしていました。

まあ、気の弱い人、潔癖な人、ゴキブリ大嫌いな人、なんてのはこの時点で卒倒もの、この文章を読むことすら苦しいかと思いますが、あいにく僕は平気、平然いたって冷静。ただジーッとゴキブリを見つめ、先に動いた方が負け、みたいな意地っ張り勝負を展開していました。こんなのはまあ、取り留めのない日常の1コマ、別に特別あげつらうほどのイベントではないんですが、ここからが異常だった。

普通、皆さんの庶民感覚で一日にどれくらいの頻度でゴキブリを目撃したら「ゴキブリ多いなあ」って思いますか。まあ、人によって様々でしょうが、中には1度目撃しただけで発狂するような感じの人もいるかと思います。少し豪胆な人でもさすがに3回ほど目撃したらもう家中がゴキブリだらけみたいなイメージを持つかもしれません。

しかしまあ、僕なんかは明らかに平気な部類ですから5回くらい目撃しようがなんてことはない。お、活発だね、って思うくらいなんですけど、ここでそんな僕すらも驚愕させる異常事態が巻き起こったのです。

いやね、1日に15回くらい部屋でゴキブリ目撃したら驚きもしますよ。しかも1日中家に居るとかじゃなくて、仕事を終えて帰宅して寝るまでの間とかでそんな数値ですからね。同じ1匹を何回も目撃とかじゃなくて確実にシリーズが違いますからね、明らかに異常すぎる。

普通、ゴキブリを見つけたらその30倍はいると思え、家中ゴキブリだらけだぞ!って言いますけど、ウチの場合、背後に控える30倍のゴキブリを考えなくても普通にゴキブリだらけ、30倍なんて想像したら恐ろしいことになります。闇に蠢くゴキブリの背後組織、もう想像したくありません。

さすがにゴキブリは平気だと言っても大量に存在するってのは勘弁で、実は僕、ゴキブリに限らず大量の虫ってすごい苦手なんですよ。単体や少数なら別になんてことはない、普通に平気なんですが、それが大量になるともう恐ろしい。幼少期に家に入ってくるアリの大群を見て卒倒して以来、大量の虫ってやつがどうも苦手なんですよ。

ゴキブリは平気、っていってもやっぱ大量にいるとなると例外なく苦手でしてね、明らかにおかしい、こんなに大量にいるなんて何かがおかしい、と珍しく取り乱してしまったんです。

いやいや、皆さんは普通に考えて部屋を汚くしてるからゴキブリがでるんじゃん、とか考えるかもしれませんが、ちょっと立ち止まって考えてみて欲しい。いやね、部屋が汚いのは今に始まったことじゃないんですよ。冷静に考えると部屋なんて常に汚いもんじゃないですか。

僕は今の部屋に住むようになってから3年半になりますけども、その間、一度として部屋が綺麗だったことがない。常にゴミだらけ、僕が何か異常な犯罪を犯してワイドショーの取材なんかが部屋に踏み込んだとしても、たぶんレポーターが嘔吐する、とんでもないブツがゴロゴロ出てくる、それくらいカオスな部屋なんですよ。別に部屋が汚いのは今に始まったことじゃない。汚いのが原因ならばとうにゴキブリ王国になってるはずだ。

じゃあ、なぜ今になってゴキブリが大量発生するに至ったか。これはもう、僕の政敵か何かが部屋にゴキブリを投げ込んでるとしか考えられないのだけど、あいにく僕は政治をやってないので政敵はいない。となると、やはり10月になってから大量発生したことと付き合わせてハロウィンの化け物ってのがゴキブリだった、そう考えるしかないんです。

ハロウィンになると化け物が家にやってくる、それを必死で迎え撃つ住人達。本来、ハロウィンとはそう殺伐としているべきなんです。ウカレポンチでパーティとかやってる場合じゃない。ブスが魔女の格好してる場合じゃない。セックスしている場合じゃない。この大量のゴキブリどもを撃退することが俺たちのハロウィンだ。こうして僕の戦いは始まったのでした。

まず、ハロウィンの祭りから考えてどうやって撃退すべきか。前述したとおり、あのハロウィン的なカボチャの仮面をかぶって自分の身を守るのが先決でしょう。ということで、早速ハロウィンに浮かれる町に繰り出してカボチャの仮面を買いにいったのですが、人気過ぎて売り切れてるのか、そもそも仮面をかぶってまでハロウィンを楽しむ人がいないのか、雑貨屋とかに行っても全然売ってませんでした。仕方ないので代用品として天狗のお面を購入、これを装備してゴキブリに挑みます。

まあ、カサカサと壁を伝って動くゴキブリに天狗のお面をつけた僕が対峙しているわけですが、それだけですからね。ゴキブリの黒に天狗の赤、赤と黒のエクスタシー、そこで時が止まったかのように両者が制止してますからね。傍目に見たらムチャクチャシュール、現代美術とかになりそうなくらいにシュール。天狗のお面全然役に立たない。

仕方ないので、無益な殺生はしたくないのですが、ゴキブリを根こそぎ駆除してやろう、それも叩いて殺すとかはやめてなるべく苦しまないような方法で駆除してやろう、と思いましてね、薬局に行きましたよ。

ほら、あるじゃないですか、置くだけでゴキブリを根こそぎ退治!とか、なんかゴキブリを誘い込んで毒を持たせるか何かして、巣に帰ったところを根こそぎ退治!みたいな、コンバットっていうんですか、CM見てるとホントにコロコロとゴキブリが死ぬじゃないですか。あれを期待して買いにいったんですよ。

で、4個パックのやつを4つ買いましてね、計16個を部屋の至る場所に、それこそヒステリー的に置いてやったんですよ。これでもう、次から次へとゴキブリが死んでいくに違いない。「ひー!お助けー!」とゴキブリが大変なことになってるのを想像して独りでムフフとか笑ってたんですよ。

しかしアンタ、何日経ってもゴキブリが全く減らないじゃないですか。それどころか増えてるような気さえしてくる始末。もう、ふっとみたら壁に3匹くらいゴキブリがいて冬の大三角形みたいな配置を取ってる始末。そのうちもっと増えてオリオン座とかになったらと思うと背筋が冷たくなってきます。

決定的だったのが、家に帰って「ふいー今日もゴキブリ多いなー」って見回した時ですよ。普通にコンバットの上でゴキブリがくつろいでましたからね。なんか移動に疲れたからコンバットの上で休憩、みたいな哀愁すら漂わせてました。完全に舐められとる。全然効きやしねえ。

こうなったらもうアレしかない、ほら、なんか部屋の中にモワーッと煙が出て根こそぎ殺しちゃうやつあるじゃないですか。バルサンとかいう文明の利器、ゴキブリに対峙して退治する我々人類の最終兵器があるじゃないですか。もはやあれを使うしかないって思ったんですよ。ちょうどバルサンを焚く様子がハロウィンでの焚き火に似てるってのもあってこりゃあベストだって思ったんです。

で、今度は近所のホームセンターに買いに行ったのですが、今度はどこにそういったゴキブリ駆除関連の商品を売っているのか分からない。色々と店内を探すのですが、どうもこういう広い店内で探すのって苦手でしてね、いくら探しても見つからないんですよ。

こりゃしょうがない、店員さんに聞くか、って思うんですけど、僕は異常に対人スキルが低いので店員さんってのが大の苦手。吉野家でお茶のお代わりくださいって言えませんからね。服屋で服を選んでるところに店員さんが話しかけてきたら買わずに逃げますからね。唐揚げ定食美味しいなーって連日のごとく通ってる定食屋にいつものように行ったら、顔を覚えられてしまって「お疲れさん!今日も唐揚げ定食かい?」とかフレンドリーに話しかけられたらもう二度とその店にはいきませんからね。

そんな事情もあって店員さんに話しかけるのをためらったのですが、それでもあのゴキブリ王国に帰りたくない!もう限界だ!という思いが強かったのか、勇気を振り絞って尋ねることに。しかしながら、緊張して気が動転してしまったもんですから

「あの、シュワーッてなるやつありますよね?」

と、半ばキチガイみたいなことを言い出す始末。なんだそのシュワーってのは。もっとマシな言葉があるだろうに。

「あ、はいはい、ありますよ」

とか間違って伝わったみたいで入浴剤コーナーに案内されちゃってね、もうどうしていいか分からなかったんですけど、さらに勇気を振り絞って

「いや、そうじゃなくて、ほら、シュワーッとしてゴキブリを殺人するヤツ」

ですからね、微妙に頭がかわいそうというか、頭の中でバルサン焚いた方がいいというか、ゴキブリを殺「人」ですよ。頭おかしい。

やっとこさ僕の言葉が通じたみたいで、ついにバルサンを購入。これでゴキブリどもが死に絶える狂気の沙汰が見れるぜと軽い足取りで帰宅しました。

で、説明書もロクに読まずに試行錯誤でやってみると、ブシューっと煙が出てきましてね、これぞハロウィン、部屋に現れた化け物を煙で撃退する、これぞハロウィン。煙に襲われて「ひえーお助けー」ってなってるゴキブリを想像してたら煙に巻き込まれて死ぬかと思った。

数時間後。さて、これで部屋に現れた化け物も退治できただろう。ハロウィン的に煙を焚いて退治できた。図らずも今年は本来のハロウィンの趣旨に近い過し方ができたようですな!まだハロウィンには早いけど!と、満足気な表情で部屋に戻るとそこには地獄の光景が待っていたのです。

いやね、何がどうなったのか分からない。僕としては部屋のそこら中に煙にやられたゴキブリの死骸が転がってるのを想像したんですよ。あちこちに転がっていてそれを掃除すればいい、なんて考えていたわけ。ところが全く見ないんですよ。死骸も見なければ生きてるゴキブリも見ない。まるでこの部屋には最初からゴキブリなんていなかった的な平和な光景が広がってるんです。

おかしなこともあるもんだと、ゴキブリが好みそうな隙間とか、ゴミの山の辺りとか探索するんですけど、やっぱり死骸も姿も見えない。もしかしてバルサンってゴキブリを駆除するものじゃなくて、どっか別の場所に移動させるものなんかなーって思ったんです。

まあ、とにかくゴキブリがいなくなってよかった、やっと安息の日々が訪れた、ってエロ本読んだり風呂はいったりと普通の日常を過していたんです。で、さてそろそろ寝ましょうかなって感じで電灯を消そうと天井を見上げたその時ですよ。

天井にビッシリとゴキブリの死骸が。

天井と壁の間に段になった部分があるんですけど、渋滞中の首都高速みたいに色々な色のゴキブリがウワーっているんですよ。見た瞬間に吹き出したもん。

どうも、考えるに、僕のやり方が不味かったのか、多分バルサンの煙が弱かったんだと思うんですよ。で、普通なら瞬殺だったゴキブリたちも微妙に生き延びた。で、弱々しい力で皆が天井に上って言ったんだと思います。上ならば煙が薄い、あそこを目指すんだ。あそこに行くんだ。そして辿りついて息絶えた、というわけなんじゃないかと思います。

もうその光景が気持ち悪くて気持ち悪くて。遠足の時に隣りの堀田君がゲロ吐いて、もらいゲロしそうになった時以上の気持ち悪さだった。堀田君はバスに乗った時から様子がおかしくて終始無言。で、僕が後ろの席のヤツと普通にミニ四駆とかの話をしていたら、どうも堀田君も何か話していた方が気が紛れると思ったのか、話題に入ってきたんですよ。「そうそう、僕のファイヤードラゴゲボゲボゲボー」なぜか車種名を言いながら吐いた堀田君。話しかけられていた僕なんか直に浴びましたからね。堀田君、元気にしてますか。

とにかく、堀田君の話の続きはWebで!今はゴキブリです。もう部屋の真ん中で震えながら「ひえーお助けー」って言うしかなかったんですけど、ここで壁を蹴ったりしたらどんなことが巻き起こるんだろう、そんな邪悪な考えが浮かんできてしまったんですよ。

ガッシ!ボカッ!

思いっきり壁に振動を与えたんですよ。そうですよね、そうですよね、そんなの分かりきってますよね。そうですそうです。ゴキブリの雨ですよ。死骸の雨。

「ギャ!グッワ!」

と叫ぶことしかできず、ゴキブリの雨の中狂喜乱舞する。で、泣きながら掃除する。もうコリゴリなんですけど、それでも僕はハロウィンはこうでなくちゃいけない、なんて思ったんです。

化け物を煙で撃退するハロウィン。 そして、使者が復活するハロウィン。バルサンで退治したはずのゴキブリが次の日には普通に部屋の中を闊歩していました。

随分とポピュラーになったとはいえまだまだマイナーなイベントであるハロウィン。良い機会ですのでこのイベントが恋人達の、とか変な枕詞が付いて定着してしまう前に、もう一度原点に立ち返り、ゴキブリどもをバルサンで退治するイベント、にしてしまいましょう。さあみんな、10月31日は部屋でバルサンだ。

ちなみに、このまえ職場でハロウィンにちなんだ飲み会という訳のわからないイベントがあったのですが、意気込んで天狗のお面かぶっていったら誰にも相手にされませんでした。そこで職場のブスが黒い服来て魔女よとか言ってて、そいつが死ぬほど酔っ払ってしまい、僕が家まで送る羽目になったのですが、まあこの話の続きはWebで!

関連タグ:

2007年 TOP inserted by FC2 system