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お姉さん系と言えばいいのでしょうか、今風とでも言うのでしょうか、妙に大人っぽい、それもかなりの美人さんがコンビニにツカツカと入ってきたのでした。いつも思うのですが、こういう「いい女」てヤツは何故かおかしいくらいに尻を振りながら歩いているものです。

なんていうか、フリッフリッとシリを振ってですね、それこそ脱腸するんじゃないかってこっちが心配になるほど左右にケツ振って歩いているわけですよ。いやいや、おかしいじゃないですか。どう考えてもおかしいじゃないですか。

ニヒルに笑うハードボイルドな紳士が集う社交場みたいな場所で尻を振るなら分かりますよ。そりゃあこんだけ美人ならば、いくらでも金持ちをゲットできます。でもね、ここは夜明け前のコンビニなんですよ。店内には大塚愛さんが表紙のnadesicoを立ち読みするブサメンパラダイス31歳しかいないんですよ。僕のような野武士が女性ファッション誌nadesicoを手に取るのはちょっと恥ずかしいんですよ。

ーーーーーーーーー!と声にならない驚きとはまさにこのこと。明らかに驚きすぎて尻こ玉が抜け落ちるかと思いましたよ。だって考えてみてくださいよ。蛍ってのはなんで尻が光るのか。あれは幻想的な光で異性を引き付けて交尾するためなんですよ。幻想的で綺麗、なんていう人いますけど、要はセックスしたいだけですからね。

しかしながら、人間はどう頑張っても尻は光らないわけなんですよ。むしろ光ってたら交尾どころの騒ぎじゃないんですけど、とにかく光らない。そうなった場合、やっぱ尻を左右に振るしかないわけなんですよね。尻を左右に振って熱烈にセックスアピールをしている、ここはそう見るのが正解でしょう。

ていうか、ここはもうnadesicoを立ち読みしている場合ではない、早く彼女の想いを受け止めてあげなければいけないっておもうんですけど、いきなり抱きつきにいったりなんかしたらダメじゃないですか。レベルとしては小学校の下校時に出没する露出狂となんら変わりがないやないですか。ここは冷静に彼女のほうからアプローチしてくるのを待つしかありません。なんとかnadesicoを読みつつ彼女のプリプリの尻を横目で追うんです。しかし、視線に気づいた彼女がキッとこっちを見たりなんかしてね。

るるるるるー。

とか、何故か鼻歌を歌って誤魔化すんですけど、今時音声に出して「るるるー」もありませんよ。どこの不審者ですか。

こうなってくると非常に怪しいのですが、それでも彼女の尻は諦めきれない。そう簡単に諦めてたら奇跡なんて起きないよ!と自分を奮い立たせてですね、さらに彼女の尻を目で追ったんです。

ローマは一日にして成らず、という格言が示すとおり何事も積み重ねが大切。こうやって目で追うことによって彼女の淫靡な想いを受け止める準備があることをアッピールしなければならないのです。

上気する息遣い、高鳴る鼓動、もうちょっとクーラーを効かせてくれよ思うほどに体温が高鳴るのを感じます。もう我慢できない!と彼女が襲い掛かってきたらどうしよう。いくら明け方のコンビニで人がいないと言えども店員はいるんだよ、それはさすがにまずいよ、大胆すぎるよ、もっと人がいないところで。

司法の場ってのは本当に容赦ないですから、公然猥褻などの性的犯罪には容赦ない判決が下されているものです。つまり、いくら相手が誘ったからといてコンビニで行為に及んでしまっては間違いなく有罪なのです。この尻に誘われて襲い掛かってしまってはいけない。絶対にいけない。

にも関わらず、やっぱ目が離せないものでコンビニ内で踊り狂う美女の尻を眺めていたんですよ。左右左右とまあ素晴らしい振幅で振られてるんですが、そうなるとね、不思議な現象が起こるんですよ。

みなさんは催眠術ってご存知でしょうか。インチキ臭い外国人が出てきてキンタマみたいな金属の玉を左右に揺さぶるじゃないですか。あなたはだんだん眠くなるーとか言われて左右に揺れる玉を見てたらコテッと寝ちゃったりしてね。

つまり、この美女の左右に揺れる尻が極上の催眠効果をもたらしましてね、徹夜明けということも手伝ってかウツラウツラと眠くなってきちゃったんですよ。nadesicoを立ち読みしながら船を漕いでる状態、まあ、色々と危ないですよ。

かなりヤバイ状態になってしまい、うわっ、これは家に帰って寝たほうがいいかなって一瞬考えたんですけど、やはりケツ振り美女は捨てがたい。このまま立ち読みを続けていたら彼女のほうから誘ってくるかもしれない。あら、nadesicoなんて男の人が読んでるの?なんて話しかけられて、いやーえへへとか受け答え、その間も彼女は尻をプリップリッ振ってるわけですよ。私、nadesicoとか読んでる男性好きなの、抱いて、そこからはもう、コンビニ内ではまずいですからいかがわしいモーテルなんか行って濃厚プレイですよ。もうプレイ中も尻振ってね、そりゃ凄いんですから。

リラックス状態とでも言いましょうか。そんな理想的展開を妄想していたら気持ち良くなてきちゃって、本当に眠くなっちゃいましてね、実は、そこで記憶が途切れてるんですよ。そこからゴッソリと記憶がないんです。

まあ、眠かったんでしょうね、徹夜明けの明け方ってのは特別に眠いですから。そこにきて尻の催眠術ですから思いっきり眠っちゃいましてね、ホント信じられないんですけどコンビニで本気寝ですよ。

しかも、立ち読み状態で静かに眠るという即身仏状態ならまだいいんですけど、何を間違ったのかその場で倒れこむように眠ったらしいんです。眠るというよりは卒倒に近い状態だったのかもしれません。

ただでさえ怪しい汚い男がnadesico読んでたんですよ。見るからに怪しいのに、そいつが女性客の尻を見てたと思ったらいきなり倒れる。これは店員さんとしては大変ビックリな状態ですよ。次の瞬間気がついたら、なんかアニメとか好きそうな店員さんが「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」とか僕の体を揺さぶっていた。「救急車呼びましょうか?」とか言われたんですけど、まさか「美女の尻を見てたら催眠術にかかって」とは言うことができず、存分にお礼を言ってエロ本買って帰りました。もうあのコンビニには行けない。

週末ってやつは恐ろしいもので様々なドラマが待っています。一週間、仕事に学校に頑張って週末を迎える。そこで開放的な気分になるわけなんですよ。抑圧された色々な何かが解き放たれるわけなんです。

明日から休みだ!って時と明日は月曜日だと思いながらサザエさん見てると時では明らかにテンションが違うでしょう。そんなテンションで日常と違う日々を過ごす週末、こいつはどんなトラップよりも恐ろしい罠なんです。週末ってのはどんな時よりもテンションが高すぎる。それ故に尻を見て卒倒なんて悲劇が起こる。

けれども、例えば休みであるはずの週末に思いっきり仕事だったらどうでしょう。それも重要な会議が催され、職場の人間多くが休日出勤となった場合、どうなってしまうんでしょう。誰もが体に染み込んだ週末ハイテンションで仕事場に来てしまったら。そこには想像だにしない悲劇が待ち構えているのです。

ニックネーム「綺麗なジャイアン」、彼はうちの職場の同僚で、すっげえ真面目で熱血漢、綺麗なジャイアンに似てるんでそう呼んでるんですけど、彼なんかすごいですよ。普段は結構真面目にスーツでビシッと決めてるんですけど、休日出勤で発奮したのかトチ狂ったのか、とんでもない格好できやがったんですよ。

会った瞬間に尻こ玉が抜け落ちるくらい驚いたんですけど、テレビ番組で正月とかにハワイ行く番組があるじゃないですか。二流くらいの芸能人がレポートするんですけど、絶対に日本では着ないようなド派手なアロハ着てるじゃないですか。それを綺麗なジャイアンが思いっきり着てるんですよ。むちゃくちゃ似合ってない。

議題は結構真面目で、それこそシリアスで深刻なことを皆が難しい顔して話し合ってるんですけど、右斜め前にアロハがいるんですよ、アロハが。スーツの中にアロハ。地味な色合いの中に咲き乱れる一輪の花。そのアロハが難しい顔しやがってからに発言とかするんですよ。笑い殺す気ですか。ホント、恐るべし週末ハイテンションですよ。

にも関わらず会議は粛々と進行していくんですけど、さらに週末ハイテンションの被害者が。僕の隣に座っていた後輩なんですけど、まあ、佐竹君なんですけど、彼がもう週末ハイテンションすぎて本当にやばかった。

かれはまあ、掛け値なしにバカなんですけど、それでもまあ会議の席では真面目でしてね。最近流行の要領のいい若者って奴で、お偉方とか権力者がいる時はいい子ちゃん、僕のようなカスな先輩の前だと悪い子ちゃんとまあ、分かりやすいくらいに舐められちゃってるんですけど、やっぱ偉い人が多い会議の席では神妙な顔してるんですよね。

けれども、この週末ハイテンションでの彼は違った。もう週末ってことで何を発奮しちゃったのかわかりませんけど、僕の隣の席でなんかコソコソ隠れて雑誌を読んでるんですよ。高校生くらいの時にちょっと不良が授業中にコソコソとマンガ読んだりするじゃないですか。あんな体勢で思いっきり何かを熟読してるんですよ。会議中に何をそんなに夢中になってんだよって思ってチラッと見てみるんですけど

らくらくナンパ術

レジャー情報これで決まり!とか頼もしいばかりの文字が躍ってるんですよ。で、アホそうな女の子が水着で表紙に写ってました。

まあ、おおよそ会議とは関係ないんですけど、どうもタウン情報誌っていうんですか、地方ごとのローカルな話題を扱う極めて田舎臭い雑誌を読んでるんですよ。

すでにこの時点で週末ハイテンション過ぎる。神妙な会議中にタウン情報誌を読むなんてありえない。普段の彼から考えたら逸脱しすぎている。と思うんですけど、問題はそこだけで終わらなかった。

人が一生懸命発言とかしてるわけじゃないですか、みんな週末に会議とか死ぬほどダルいとか思いながら、それでも最低限の理性で思い留まって普通に会議を進行させているわけですよ。

生活がかかてるってわけではないでしょうけど、それでもみんな仕事を成立させようと頑張っている。それなのにアロハとかタウン情報誌とか許されていい問題じゃない。週末ハイテンションだからって見過ごしていい問題じゃない。だから言ってやったんですよ、会議の支障にならないように、極めて小声で言ってやったんですよ。「おい、そういうのはやめろ」って極めて男前な感じで言ったんです。

終ってから読めばいいだろ、とも言いました。しかしですね、佐竹君はバカというかキチガイというか、聞く耳持たないというか、僕の注意が聞こえてないのか満面の笑みで言うわけですよ。

わかってますってー、ちょっとまってくださいよー

って言いながらそれでも読み続けるわけなんですよ。全く聞いていない。全く分かってない。もう頭おかしい、週末ハイテンション過ぎる。

ただでさえ週末会議で憂鬱なのに、こんなに週末ハイテンションな後輩が横にいると陰鬱になってくる。でもまあ、頭ごなしに怒るってのもどうかと思うので、少しフレンドリーに接して、やんわりと注意するのが得策だと思いましてね、「何をそんなに夢中で読んでるんだい?」とピロートークみたいな優しさで話しかけたんですよ。

死ね!ホントに死ね!とか思いながらも優しく話しかけると佐竹君は嬉しそうな顔しましてね、なんか満面の笑みであるページを見せてくるんですよ。「いやーちょっとここ読んでくださいよー」とタウン情報誌のあるページをこちらに押し付けてくるんです。

にじり寄るように雑誌を押し付けてくるんですけど、おいおい、そんなに情熱的にやったらバレちゃうだろうが、今は会議中だぞと思いながら見てみると、なんか読者投稿のページなんですよ。雑誌の読者が雑誌に投稿して、今日は片思いの人と目が合っちゃってドキドキしちゃった、とか死ぬほどどうでもいい、インクと紙の無駄遣いみたいなことを書いてるページなんですよ。

ただの読者投稿ページじゃん、こんなの何が面白いのか全然分からないよ。頭おかしいんじゃない?みたいなニュアンスのことを佐竹君に伝えたんですけど、すると彼が続けるわけですよ。「そのペンネーム赤丸花子さん(21)の投稿を読んでみてください」とか、気持ち悪い笑顔で言ってくるんです。

いやいや、赤丸花子さん(21)の投稿なんて普通じゃない、近所に美味しいケーキ屋さん見つけて犬の散歩が楽しくなった、みたいな至極どうでもいい、むしろ腹立たしさすら覚える内容じゃないですか。

会ってすぐにハメて!ハメ狂って!とか赤丸花子さん(21)が書いてたら会議そっちのけで夢中になるのもわかりますよ。それなのにケーキ屋とか微塵も夢中になる要素がない。頭おかしい。週末ハイテンションってこういうものなのか。

社長みたいな偉いっぽい人が会議で発言しています。そんな重要な場面を無視して夢中になるほどのポテンシャルがないんですよ。赤丸花子の投稿には。

やっぱさあ、こういうの会議中に読むのは良くないよ。いくら週末会議で面倒だからってさ、ちゃんとやろうよ、みたいなニュアンスのこと言いながら彼に雑誌を返すと、彼がカッと目を見開いて言うわけなんですよ。「ちょっと待ってください!もっとちゃんと読んでください!」どんな時でもこんな彼の真剣な顔を見たことがない。こりゃ、何かあるに違いない。

めんどくせーなって思いながら再度読んでみると、やっぱり普通の投稿だ。赤丸花子さん(21)の投稿におかしいところはない。それでも熟読してると佐竹が言ってくるんですよ。「赤丸花子さんの投稿の最初の一文字目を続けて読んでみてください」とかなんとか。赤丸花子さん(21)はどうでもいい文章を複数行に渡って書いてるんですけど、その頭の文章を繋げて読んでみるんですけど、なんと、驚くことに「おまんこ」になってるじゃないですか!頭の文字だけを読んでいくとしっかり「おまんこ」になってるじゃないですか。エロい!エロすぎるぞ!

ただもんじゃねえよ佐竹!よくこんなの見つけたな!ケーキ屋とか犬の散歩とかお嬢様風味の投稿に「おまんこ」を見出すとはな!とマジで尊敬しました。そんなわけありません。

いやいや、頭おかしいじゃないですか。投稿の頭文字だけ読んで「おまんこ」とかどうでもいいじゃないですか。赤丸花子(21)とかどうでもいいじゃないですか。そういう読み方して喜ぶなんて中学生でもしないですよ。週末ハイテンション過ぎる。週末ハイテンション過ぎてどうしようもない。とか思ってると「こら!さっきから何をやってるんだ!」とか偉いっぽい人に怒られちゃいましてね、満場の会議室で僕が立たされてやり玉に挙げられる始末。佐竹が悪いのに立たされて怒られた僕は狼狽しちゃいましてね、「いや、佐竹君が赤丸花子・・・投稿がおまんこで・・・」、と狼狽し、職場の面々の失笑をかったのでした。しかも綺麗なジャイアンが、アロハジャイアンのやつが「週末だからうかれてるんですよ」とか言いやがって、お前が言うなって感じなんですけど、とにかくやり玉に挙げられて、僕が一番週末ハイテンションだったってことになったのでした。一人だけ立たされて、恥ずかしいやら何やらで、尻を見た時とは別の意味で卒倒しそうになったのでした。

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