モンゴル放浪記Vol.1

モンゴル放浪記
Vol.1

いやー、やっぱ日本は蒸し暑いですな!郵政民営化やら総選挙やらB'zやら、何かとゴタゴタしている日本に帰ってきましたよ。モタモタしているうちに29歳になっちゃって三十路にリーチ、加齢臭半歩手前みたいな状態になってますが、なんとか生きて日本に帰ってまいりました。

帰ってきたら家賃の滞納がエライことになってるわ、携帯電話の料金を滞納しすぎて契約自体が消滅してるわ、音信不通すぎて親父が職場に電報うってくるやら大暴れ。早くも国外脱出したくなったのですが、気を取り直してモンゴルオフの報告を書きたいと思います。

「ぬめり本」を世界に知らしめるためワールドワイドにオフをしよう!そう思いついて行ったオフですが、砂漠を放浪するやらモンゴルの警察に捕まるやら、ナイトクラブで大塚愛かけるやら、モンゴル相撲するやら大暴れ、その模様を全4回くらいに分けてお送りしたいと思います。そういうわけでどうぞ。


モンゴルってのは思いのほか遠い。蒙古襲来やらチンギスハーンの活躍など、歴史を紐解いてみると身近な国のように感じるかもしれないが、交通網が発達した現代でも飛行機で5時間はかかる有様、それくらい遠い。

7月某日。出発前日。僕は福岡市内のホテルにいた。もちろんそれは他でもないモンゴルに旅立つためなのだけど、予想以上に遠いモンゴルは簡単な上陸を許さない。なにせ日本からダイレクトに行くのが難しい。

まず、福岡空港から飛行機で韓国インチョン空港に行く。そこから圧倒的な乗り換えの悪さでインチョン空港で7時間足止め。で、「モンゴル航空」とかいう聞くだけで不安になるような、落ちるんじゃねえの?と思うような名前の飛行機を使ってモンゴルの首都ウランバートルへ。

飛行機に乗ってる時間が韓国行き、ウランバートル行きを合わせて5時間、待ち時間が7時間で出発前の手続き関係で2時間かかるとしてどう考えても14時間ほどかかる計算。まさに近くて遠いモンゴルだ。

そうなると、我が家から朝に出発してモンゴルに行くってのは非常に難しく、どうしても前日に福岡入りしてホテルに宿泊する必要があるのです。我が家から出発したら朝2時起きとか、深夜徘徊するボケ老人みたいなことになってしまう。

韓国インチョン空港行きの飛行機が福岡空港を朝の10時に出る。海外に行ったことない村百姓の皆さんはご存知ないかと思いますが、海外行きの飛行機ってのは出発の2時間前には空港に到着してないと色々と危険が危ないんですよね。

出国手続などの諸手続きが煩雑ですから、やっぱ出発の2時間前には空港に仁王立ちしておきたいところ。つまり8時には福岡空港に到着しておく必要がある。

つまり、前日から福岡入りして翌日の飛行機に備える。そうするとですね、ゆっくりと睡眠を取って2時間前には余裕で空港に到着できますし、手続きも焦ることなくできる。出発まで空港のラウンジでテイクオフする飛行機を眺めながらモーニングコーヒー、なんてハイソサエティで優雅なことも余裕でできるんですよ。

ということで、ホテルに泊まったことだし、早速ベッドにインしてグッスリと睡眠を、それでもって7時くらいに起きて空港に向かう、とか考えてたんです。

けれどもね、なんかホテルのテレビの深夜放送でやってた「カジキマグロを釣る!」みたいな番組が容赦なく面白くて、ホンコンみたいな顔したオッサンが胸まである長靴みたいなの履いて苦悶に満ちた表情で2時間くらいカジキマグロとファイトしてんの。もう、それ観て興奮してたらすっかり寝るタイミングを逃しちゃっていつの間にか深夜の3時くらいになっちゃってんですよ。

これはね、非常に危険な分岐点ですよ。おきる予定の時間である7時まで約4時間。これは十分な睡眠を取るには短すぎる時間ですし、ちょっと仮眠するには長すぎる時間。非常にデンジャラス。

このまま徹夜で起きていればまず間違いなく飛行機に遅れませんが、そうなると体力的に危うい。けれども寝てしまうとグッスリ夢の世界に誘われてしまって寝坊する危険がある。4時間の猶予ってのは本当にグレーゾーンで寝るか起きてるか死ぬほど迷うんですよ。

とりあえず、間違いなく寝過ごす自信があった僕は徹夜で起きていることを決意。なんとか寝てしまわないように、エロい放送を見る用のカードを買ってきたりして凌いだんです。

いやービジネスホテルで鑑賞するエロビデオって本当に素敵ですよね。ちょうど放送では「やりすぎ家庭教師」っていう名作シリーズのエロビデオを放映していたんですが、「先生!」「だめよタダシ君」とか棒読みでやってて最高。生徒役がAV男優だから、どう見ても生徒に見えないところとか最高。とか悶々と見てたら、そのなんだ、あまりのつまらなさに寝入ってしまったらしく、意識がプツンと切れてしまった状態に。で、次に意識が戻った時には衝撃の事実が。

9:05

ギャース!飛行機は10時くらい出発!起きたのが9時5分!何を、どうやっても、間に合わない!時間に余裕を持って優雅に起きてコーヒーブレイクなんて正に夢のまた夢、それどころか夢の彼方。今や出発すら危うい状態に。

ここからの僕は凄かった。なんと、起きて2分でホテルの部屋を飛び出してチェックアウト、なんと5分後にはホテル前に待機していたタクシーに飛び乗ってた。で、

「福岡空港国際線ターミナルまで、死ぬほど急いで下さい」

それを受けた運転手さんは、

「急ぎってわけだな?任せな!」

と死ぬほどカッコイイセリフを吐いて裏道を駆使して空港へ。映画「TAXI」みたいな走りでドライビン。なんと、9時17分には到着してましたからね。早すぎるぜ、運転手さん。

そこからはもう、鬼のような勢いで手続きをしてですね、なんとか韓国インチョン空港行きの飛行機に乗れたわけなんです。もちろん、海外に行くってことで周りの乗客は色々とオシャレしてるわけなんですけど、その中で僕だけ思いっきりTシャツに短パンという睡眠時のラフな格好。頭だってネグセバリバリ伝説、目やにとかついてましたからね。こんな格好で海外に行くやつなんていない。出国審査の係官がものすごい怪訝な顔で見てたもの。

福岡空港から韓国インチョン空港までの飛行時間は55分間。ハッキリ言って東京に行くより近い。けれども、その機内は修羅場で正にシュラバラバンバ。国際線ということで妙なプライドがあるらしく、55分という飛行時間でも意地になって機内食を出すのな。

おまけに、気流が悪いらしくて飛行機は若干揺れが多め。そんな中で鬼の形相、意地になっちゃって機内食を出し続ける乗務員さんたち。これはもう機内食とかそういうのじゃなくて餌だよ、餌。オラ、食え!って感じで出されるんだから。

とにかくまあ、朝食すら食べられなかった僕にとっては、こんな餌のような機内食でもありがたい話。モサモサと食べているうちに飛行機は着陸し韓国へと到着したのでした。

さて、韓国に到着したのはいいものの、ここインチョン空港で7時間の足止め。乗り換えが悪いにも程があるんですけど、とにかく7時間待ち。空港から出ることもできるっぽいのですけど、そうなると諸手続きが色々と面倒なので出発ロビーで7時間軟禁されることに。

しっかし、すごいのな、出発ロビーには免税店が鬼のように軒を連ねていて豪華絢爛、カルティエだとかグッチだとか高級ブランド店が威風堂々と並んでるんですけど、そこで日本から来たであろう独身OLみたいなのが狂ったようにバッグとか買い漁ってるんですよ。何が嬉しくて空港に来てまでブランド物を買い漁るのか意味が分かりません。トチ狂ってるんじゃなかろうか。

僕は僕で、7時間の時間を潰すために映画「ターミナル」の人みたいにソファーで寝てみたり、あちこちに投げ捨てられているカートを集めてみたり、暑くて喉が渇いたので喫茶店みたいな場所に入って「コーク、プリーズ!」とコーラを頼んだら思いっきりホットコーヒーが出てきて涙を呑んだり。そうこうしているうちに7時間が経過してウランバートル行きのモンゴル航空が出発する時間に。

出発ゲートに行くと、モンゴリアンエアラインとか書かれた、今にも落ちそうなオンボロな飛行機が、逆に頼もしくなってくるくらい堂々と停まっていて、その飛行機に乗り込むんです。飛行機に乗ると、もう機内から意味不明にムアンとモンゴルっぽいお香の匂いみたいなのがしてきてビックリするんですけど、それよりなにより飛行機がボロすぎて恐ろしすぎる。

そんなこんなで飛行機が離陸するわけなんですけど、機内放送はモンゴル語と韓国語と英語でした。何言ってるのか全然分からない。機長が神妙に「この飛行機は今から墜落します」とか言ってても全然分からない。怖すぎる。

そんな恐怖に怯えること数時間。いよいよ飛行機は墜落することなくウランバートル空港に着陸。着陸の際、窓際だった僕はすっかり日の落ちたウランバートルの景色を見ていたのですけど、それがなんというか、腰が抜けるくらい灯りが少ないんです。確かウランバートルは100万都市くらいだったはずなんですけど、それにしては灯りが少なすぎる。

ここで少しおさらい。モンゴルは古くから定住地を持たない遊牧民が多く暮らす国でした。ゲルと呼ばれるテント的な住居に家畜と共に暮らし、牧草が少なくなると別の地に気さくに引っ越す、そんな生活様式です。しかしながら、最近では都市的生活に憧れる若者が増加。多くの人が首都ウランバートルに移り住み首都は急激に都市化しているそうです。モンゴル国の人口240万のうち、半数の120万あまりがウランバートルで定住生活をし、昔ながらの遊牧民は激減しているそうです。

そんなこんなで、ウランバートルはまあまあの大都会かなと思っていたのですが、上空から見る限りではかなり危険な状態。こりゃどうなるかな、と少しだけ不安になったのでした。

ウランバートル空港に到着すると、まずは入国審査。ネグロカサスみたいに褐色の肌をした審査官が僕のパスポートを見ながらジロリと睨んできます。「なにしにモンゴルに来たんだ」みたいなことを聞かれたら「本を売りに来た」と英語で答える準備をしていたんですけど、何も聞かれることなく入国審査をスルー。晴れてモンゴル国入国を果たしたのでした。

さて、ここからは心を引き締めてかからねばなりません。これまで福岡、韓国と移動してきたわけですが、言うなればかろうじて日本語が通じる地域でした。福岡は当然ですが、韓国だって日本語はかなりの確率で通じます。おまけに案内表示も、ハングルに並んで英語、日本語と表記がされています。やはり、日本とは繋がりの深い韓国、腐っても隣国ですから、そういうのは当然なんでしょうが、ここからは違います。

まさに近くて遠いモンゴルです。こんな僻地に来てまで日本語表記があるとは思えません。日本だってハングル表記の案内表示は多いんですが、モンゴル語表記なんて絶対にありません。それと同じことなのです。

さあ、韓国まではまだ日本語があったりしたけど、ここからは違うぞ。なにせモンゴルだ。日本語は皆無、かけらすら存在しないだろう。心を引き締めていかないとな!僕は唇をギュッと噛んで空港のゲートをくぐりました。すると、

画像

うまエキス

僕の決意をグチャグチャにする日本語表記がモロンと。それも全く意味不明です。あまりに予想外の出来事に膝がガクガク震えるのを感じつつ、僕のモンゴル第一歩は始まったのでした。あまりに長すぎるので次回に続く。

次回はいよいよモンゴルオフの模様と共にウランバートルの風景を!

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