ファーストブラ

ファーストブラ

初めてブラジャーを装着したあの日のこと、あなたは覚えていますか?

こういう事を言うと変の態、いわゆる変態に思われるかもしれませんが実際にはそうではありません。これは極めて真面目なお話です。「セクハラ!」とお怒りになるお局さんもいるかと思いますが落ち着いて聞いてください。

ブラジャーとはそもそもなんなのか。単なる布で片付けるには付加価値がありすぎるし、かといってどんなに貴重だと崇め奉っても中身のオッパイに勝てるはずもない。極めて不安定でアンバランスな状態にある、それがブラジャーなのです。思いを馳せてみると、大人と子供の間で揺れ動く思春期の若者のようではありませんか。

子供から大人へと移り変わる時、女性はブラジャーを装備するようになります。そう、まるで認められた戦士が聖衣(クロス)をまとい聖闘士(セイント)となるようにブラジャーを着けて少女から女へとステージが変わるのです。そう、ブラジャーは聖衣なんですよ。

男性の方、特に想像力が欠落している方などは理解し難いことかもしれません。ブラジャーなんて所詮は胸当てじゃないか。乳首を覆って胸を支えてる布キレじゃないか。そう考えるのが普通でしょう。けれども、それじゃあいささかロマンが足りないと言うしかありません。

例えば、僕ら日本人にそういった風習はありませんが、もし仮に、「男児は14歳になると成人とみなす。同時にチンコケースを装着すること」という風習があったとします。角のような筒をチンコを覆うように装着する、そんな風習があるのです。

14歳といえばもうチン毛も生えてます。ええ、モジャモジャです。それに見合った威風堂々としたチンコケースを選びたくなりませんか?少し見栄を張ってサイズ大き目のチンコケースを選びたくなりませんか?金持ちだったら象牙とかで作りたくなりませんか?

なりますよね、そう、それがロマンなんですよ、ロマン。結局、女性にとって初めてのブラとはチンコケースと同じロマンがあるわけなんですよ。

どうせNumeriの読者は男色99%、男闘呼組みたいなものでしょうから分かりやすいように引き続きチンコケースに置き換えて考えてみましょう。

チンコケースを装備できる年齢になりました。晴れてあなたもチンコケースを装備し、誇らしげにぶら下げて街を闊歩することができるのですが、その際、きっと照れると思うのですよ。

やはり性的なことです。おまけに思春期です。異性と目が合ったら興奮する、異性のいい臭いがしたら興奮する、そんな年代ですからバリバリ伝説なみに意識すると思うんですよ、チンコケースを。

学校では早々とチンコケースを装着しているクラスメイトを羨望の眼差しで見つめ、つけてる者どもはそれとなく誇らしげに、つけてない者どもは「あんなものつけねえよ」と悪口をいいつ羨ましい。持てるものと持たざる者の強烈な二極化が始まるのです。この構図は貧富の差が激しい諸国を想像すると分かりやすいかもしれません。

で、クラスにはやけにチンコケースに詳しいチンコケース博士みたいなマセガキが配備されていて聞いてもいないのにチンコケースの素晴らしさや「チンコケースつけてると早くずる剥けになるらしい」といった真偽不明のデマを流してきたりします。そうすることでどんどんと意識し出すようになるんです。

俺もそろそろチンコケースをつける年頃。でもまてよ・・・?チンコケースって結構高価なものなんじゃ?そんなの俺の小遣いでは買えないぞ。もしかして親に買ってもらうしかないのか?

いっぱしの大人を気取り生意気言って「親なんて」と思う反抗期、しかしながら親に寄生しながら生きている。親なんかクソ食らえと思いつつも、親がいないと生活できないし学校にも行けない。そんな現在の自分が抱える矛盾に気がつくのです。チンコケースなどの性的なことは自分の中で秘め事にしたい、けれども親の介入なしにはどうしようもない。

チンコケースを買ってくれ

その言葉が親に切り出せず、少年は近くの竹林で竹を切り自作でチンコケースを作成しようとします。けれどもどうにもならない。自立心と羞恥心がせめぎ合う矛盾のラビリンスの中で少年は苦悩するのです。

そこに、息子の成長を影で見守る母親がコッソリと近所のジャスコで手頃なチンコケースを買ってくるのです。「高志、お母さんこれ買っといたからつけときなさい、そろそろ必要でしょ」

この母親の行動を何より心待ちにしていたのは少年自身なのですが、思春期の少年の性的エトセトラに親が介在するなど、油かぶって火の海に飛び込むようなもの、裸で原子炉の中に飛び込むようなもの。少年の起爆スイッチを押してしまうことになるのです。

「るっせえんだよ!誰がこんなもの頼んだんだよ!」

普段は優しい親思いの子ですが、やはり性的なことはタブー。カッとなって母親を怒鳴りつけてしまいます。そして母が買ってきたチンコケースを床に投げつけます。コロコロと転がるチンコケース。これぞ反抗期。けれども、その中身は本気で母親に対して怒ってるわけでなく、ジャスコのレジでチンコケースを買う母の姿を想像して無性にやり切れない気持ちを抱えているに過ぎないのです。結局、自分の不甲斐なさに怒ってるだけなんです。

「こんなダサいデザインのチンコケース誰がつけるかよ!」

床に転がっていたチンコケースをさらに蹴る少年。吹っ飛んだチンコケースは冷蔵庫にあたり、その場でエネルギーを失うまでクルクルと回転しています。

「ごめんね、高志ちゃん。お母さん、どういうのがいいのか全然分からないから・・・」

謝る母親。けれども少年は分かっています、母は何も悪くないと。悪いのは自分だと。母は自分のためを思ってチンコケースを買ってきてくれた。切り出せなかった僕にとってそれはどんなに有難いことか。けれども素直にその気持ちを表現できない。

「ごめんね、ごめんね、お母さん、明日取り替えてもらいにいくから」

まだ回転を続けるチンコケースを拾おうとする母。これ以上母に迷惑をかけられない、そう思った少年は母の動きを制します。

「るっせえ!もういいよ!」

母の手からチンコケースを奪い取り、自分の部屋へと消える少年。こんなんじゃない、なんで素直にありがとうって言えないんだ。チンコケースをギュッと握り締めて布団に潜り、素直じゃない自分を呪うのです。

しばらくして落ち着くと、少年は服を脱いでチンコケースを装着してみます。これで自分も大人の仲間入り、なんだかワクワクする反面、意味不明の緊張感が身を焦がします。

「でかすぎるよ・・・母さん・・・」

鏡の前でポーズを取るものの、どう見てもチンコケースはブカブカ、二周りくらいサイズがでかく、よく見ると「L」とかシールが貼ってあります。母さんはきっと息子のブツを過大評価していたのでしょう、ウチの息子ならこれくらいビッグコックなはず、そう思ったのです。

俺のために母さんが買ってくれたチンコケース。デザインもダサくて、意味不明に虎の彫り物とかしてあってサイズもブカブカ、だけど僕の初めてのチンコケース。少年はきっとこの日のことを忘れないでしょう。そして、思い出すたびに理不尽に母を怒鳴りつけたほろ苦い思い出を、ブカブカのチンコケースと共に思い出すでしょう。すぐには無理でしょうけど、きっと母に対して素直になろう、いたわる心を持とう、そう思うはずです。

そう、チンコケースを装着するようになるということは、ちょっぴりだけ大人になるということ、自分がまだ子供であることを自覚し、少しづつ大人になるために歩き出すということなのです。ただチンコを覆うケースを手に入れるだけじゃないのです。

大切に机の上に置かれたチンコケース。傷がつかないようタオルに包んで置かれたチンコケース。母が買ってきた大き目のダサいチンコケース。少しだけ大人になった少年は明日学校に着けて行くことを夢見て深い眠りにつくのです。

とまあ、大体こんなものです。上の話の「少年」を「少女」に置き換え、「チンコケース」を「ブラジャー」に置き換えると大体同じことになるのです。そりゃあ話の細部は違うでしょう。世の中にはブラジャーの数だけ物語がありますから人によってエピソードはまちまちです。でも、ブラをつけることで内面が大人に向かい始める、それは間違いないことなのです。

世の中には様々な、「大人」の基準があります。それが「成人式」だったり「一人暮らしをはじめること」だったり、あるいは「SEXをすること」だったりするかもしれません。けれども、そんな誰かが用意した儀式やら対面的なこと、性行為が大人の基準だとは断じて思えない。

ブラジャーをして大人の階段を一歩踏み出す、それが大人への第一歩だと思う。何もブラをしている外面的姿を言ってるのではなくて、ブラをすることによって心の中で一歩踏み出す、大人に向かって踏み出す、それが大人の基準なのです。

僕ら男はブラジャーなどしません。中学生くらいの時に母ちゃんのブラを装備して鏡を見てルンルンなんてことを一人風呂場でやっていましたが、そんな時や一部の例外的な人を除いて大部分の男性がブラジャーを常用しません。つまり、初めてブラをする神の瞬間、ファーストブラが存在しないのです。

他にもブラに変わるような、聖衣(クロス)となりうる物が男性には存在しません。それこそチンコケースくらい導入したほうがいいんじゃないか、と思うほど存在しないのです。そう、言うなれば大人の第一歩を実感する瞬間が男には存在しないのです。男は子供っぽくて女は大人で現実的、すっごい極論ですが世間でよくいわれるこの現象はそんなことが関係しているのかもしれません。

ブラをする事ができる、初めてブラをする瞬間が訪れる、それは女性だけの特権で、しかも大人の階段を上り心の中が少しずつ成長する、そんな素晴らしき神聖なものなのです。決して恥ずかしがることなくその体験を誇るべきだ。胸を張るべきだ。今うまいこと言った。

ということで、僕は上記のような真剣な理由で、その人が大人になった瞬間のことが聞きたくて、決してエロスとか乳房とか関係なくてファーストブラ体験を女性に尋ねることがあるのですが、職場の後輩女性(新卒で入ってきた23歳2年目OL)に飲み会の勢いで真剣な顔で質問してしまい、その、なんだ、本気でセクハラ対策室みたいな駆け込み寺に駆け込まれるところでした。本気で謝るので許してください。

ということで、女性はもっとファーストブラ体験を、初恋体験より誇らしく美しい思い出として語るべきだ。今日はそういう主張でした。

ちなみに、男にはファーストブラに匹敵する体験がないって書いたけど、僕が幼い頃、ウチの家の階段のところの壁に、どこで買ってきたのか知りませんけど親父が三本のチンコケースを威風堂々、一世風靡と言わんばかりの勢いでバベルの塔みたいに飾ってましてね、ある日の深夜にその中の一番立派な1本を半裸の親父が装着し、母親とジリジリと対峙、バスケットのゾーンディフェンスの人みたいになってる地獄絵図を目撃しましてね、今思うと「どんなプレイやねん」と突っ込まずにはいられないのですが、幼心に「大人はチンコケースをつけるんだ、だからウチには親父の分、僕の分、弟の分と3本のチンコケースがあるんだ、たぶん爺さんは老人だからいらないんだ」と本気で勘違いしてしまったんです。結構成長するまで本気で信じており、僕の中では「大人になる=チンコケース」がマジだったのです。

ということで、僕は齢28にして未だに子供っぽさが抜けず大人になりきれていないのですが、大人になるべく、今度チンコケースを買ってきて誇らしげに装着してみたいと思います。チンコケースつけて何食わぬ顔でウィークデーを過ごしてやる。

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