ゴールデンウィーク

ゴールデンウィーク

世間様はゴールデンウィーク真っ只中、みなさん行楽に観光に恋に仕事に忙しい事と思います。僕は僕でゴールデンウィークだというのに初っ端から葬式に参列するというゴールデンとは思えない日々を過ごしておりました。

職場の上司の親族が亡くなったとかで、何の縁もない人の葬儀に参列したわけなんですが、炎天下の真昼間に喪服を着て出棺を見送るという拷問みたいな扱いを受けておりました。照りつく日差しがチリチリと真っ黒の生地を焦がしており、早い話、こっちが死ぬかと思った。

亡くなった方は88歳だったらしいのですが、参列している人も負けじと高年齢。葬儀前の雑談では老人どもが「いやー、豊蔵さんは何歳じゃったんかいの?」「わしの3つ下だったはずだから88歳くらいかのう」「まだまだ若いのに・・・」なんていう、物凄いハイレベルな攻防が繰り広げられておりました。もはや神々の戦いのレベル。

まあ、そんな地獄の葬儀の話は置いておきまして、さすがに連日参列しているというわけでもなく、何もすることない退屈な休日ってのもあったわけなんですが、これがもう破格に素晴らしい。

気だるく流れるアンニュイな時間。普段、仕事や時間、家賃の督促に終われ心安らぐ暇のない僕にとって休日こそが最高の癒しだったりするのです。そういう時はね、僕はダラーっと気を抜いてテレビを見たりするんですよ

僕は普段はテレビを全く見ない人間で、現に数ヶ月前までは家にテレビすらないと言う、仙人みたいな生活をしていたわけなんです。ドラクエ8をプレイしたいがためにテレビを購入し、いくらかテレビを見るようになったのですが、やはりまだまだ人並み以下です。

そんな僕でも楽しみにしている番組ってやつがあって、それが「休日の午前中にやっているローカル色丸出しの番組」だったりするのですが、これがもう心の琴線をブルンブルンと振るわせてくれる。死ぬほど楽しみに見ていたりするんです。

都市部在住の方にはピンと来ないかもしれませんが、特に土曜日など午前中にやっているローカル番組は物凄いものがあります。

見たことないような自称芸能人が芸能人風吹かせて地方都市で郷土料理に舌鼓を打つ、なんてまだまだ序の口。酷い番組になるとホームビデオで撮ったような記念講堂かなんかの落成式の様子を延々と流してますからね。それだったら開き直ってアンパンマンの再放送でもした方がいいんじゃないかっていう内容ばかり。

まあ、ローカル番組なんて予算も少ないでしょうし、あまり視聴率も見込めない。そうなると自然と出来ることは限られてくるのでしょうけど、僕はそのやる気のなさっぷりが大好きなんですよね。良い意味でやる気のないローカル番組。これがもう極上の好物なんです。

ちょうどその日もですね、ウホウホと喜びながらテレビを見ておったんですわ。休日の午前に布団の中でまどろみながらクソのようなローカル番組を鑑賞する、これほど極上の幸せがあるだろうか。

その日は、超ローカルな少年剣道大会の模様を放送しておりました。「羽ばたけ!少年剣士!」とかいう、観てるこっちが恥ずかしくなるようなサブタイトルがついており、一人で身悶えるような、まるで心をレイプされたかのような感覚に酔いしれておりました。

どうやら、ちょっと規模が大きめの小学生剣道大会が近くの体育館であったようなのですが、その様子をごろっと1時間枠で放送してやがるんですよ。ただただ小学生が「めーん!」とか叫んでるのを放送するのみ。番組編成上、大変問題ありですがローカル番組では普通に行われることです。

ちっちゃい防具をつけた子供がチョコマカ跳ね回りながら「めーん!」だとか「どー!」とか言ってる映像を垂れ流す。実況も解説も何もなし。この脱力っぷりがたまんねーよなー、とか微笑ましく見ていたんです。

さすがに試合の様子を延々と垂れ流してるだけではなく、なんとかして番組としての体裁を整えようと、試合後の控え室の様子だとかインタビューとか、K-1みたいなことしてるんですけど、これがまた別格に面白いのな。

負けたチームの小学生が顧問の先生に怒られちゃったりして、元気いっぱいだった子供達がションボリしてるの。先生も先生で「貴方達、負けて悔しいの?そりゃ悔しいでしょうよ!」とか何が言いたいんだかサッパリな説教をかます。で、そこで負けたてホヤホヤの児童にインタビューですよ。

「どうでした?試合に負けて?」

レポーターも酷いもので、試合に負けた直後の子供にこんなセリフを投げつけることないんですけど、下手したら泣き出してトラウマになるんじゃって思うんですけど、それでも子供は子供なりに神妙な顔して答えるんです。

「ちょっと消極的だったからダメだった思います。もっと積極的に前に出ないと勝てないです。何事でもそうだと思います」

とまあ、あまりに正論過ぎて「黙れ小僧!」と言いたくなる様なセリフを吐きやがるんですよ。休みの日にウダウダしてるところに、年端も行かない子供にこんな人生訓みたいなこと言われたら微妙に凹むぜ。

そんなこんなで、涙あり笑いあり元気いっぱいの少年達の剣道絵巻をグデーっと見ていたわけなんですが、どうも大会は終盤になってきた様子。いよいよ決勝戦が行われる感じでした。

さすが決勝戦ともなるとこれまでの垂れ流しとは打って変わり、製作サイドにも気合が見られます。なんと決勝前に両陣営のインタビューから始まるのです。

「いよいよ決勝ですが、自信はありますか?」

とかなんとか、あまりに無難すぎる質問が投げつけられるのです。しっかし最近の子供はすごいね。ローカル番組とはいえテレビの取材が来て、自分にインタビューしてると言うのにしっかり受け答えしてるんだもの。

「はい、絶対に勝ちます。沢山練習してきた技が出せるように頑張ります」

とか、すっごいシッカリしてる。なんていうかテレビ慣れしてるっぽいんですよね。僕なんて、この子供達くらいの年の頃なんて野原でバッタばっかり捕ってたっていうのに、時代が変われば変わるものです。

順々に団体戦の決勝に出る少年達がインタビューされていく。やはりみんなシッカリと受け答えしてる。そんな中、一人の少年のインタビューが目に留まる。ちょうどちょっと勝気なガキ大将みたいな、言い方を変えるとヤンチャそうな少年にマイクが向けられ、決勝への意気込みが語られる。

「どうですか?決勝に向けて意気込みを」

「はい、準決勝までは結構楽に勝てて来ましたが、決勝の相手は準決勝までと違って随分と強いと思います」

本当に小学生かと思うほどにキッチリとした受け答え。本当に小学生時代の僕があの場でインタビューを受けていたらお寒いことになってるに違いない。何していいか分からず、ウケを取ろうとチンコくらい出すかもしれない。危ない危ない。

そんな風にテレビを見ながらどうでもいいことに思いを馳せる。これが幸せな休日の姿なんだ、やれ観光だとか、やれレジャーだとか、やれオフ会だとか、そういうのは確かに楽しいけどアクセクしすぎ。たまにはこうやってのんびり過ごし物思いに耽る、そういうのも良いもんだ。

そう考えながら件の彼のインタビューの続きを聞いていると、そんな穏やかな休日だとかそういった概念を吹き飛ばす途方もない一言が。ハッキリ言ってブラウン管に向かって突っ込まずにいられない。いてもたってもいられない。そんな状態でした。

「決勝の相手は準決勝までと違って随分と強いと思います。ですから、油断しないよう、体を引き締めて頑張りたいと思います」

物凄い神妙な、力士が横綱になる時みたいな顔して言っておりました。いやいや、体を引き締めてどうする。それを言うなら「気を引き締める」だろうが。体を引き締めちゃダイエットになっちゃうじゃないか。というか、決勝目前、あと数分しかないのに体を引き締められるのか。

と、テレビに向かって突っ込みまくり、シッカリしているといっても所詮は小学生、なかなかカワイイ言い間違いじゃねえか、なんかカッコイイこと言おうとして無理しちゃったんだなー、と微笑ましく思っていたのですが、よくよく考えたら先日参列した葬式で、喪主である上司に挨拶をしようと神妙な顔して「心からお悔やみ申し上げます」と形式ばって言おうとしたのですが、何をトチ狂ったのか「心から暗闇申し上げます」とか言ってました。暗闇を申し上げてどうする。

それを聞いた時の上司の呆け顔は、それはそれで面白かったのですが、またもやマイナスポイント。悪印象を与えたに違いなく、首になる日は近い。間違いなく近い。肩を叩かれる。

首になったらゴールデンウィークどころの騒ぎではなく、毎日がゴールデンウィークになるわけですが、そんなこと気にせずつかの間の休日を楽しみたいと思います。

結局、何が言いたかったかと言うと、ゴールデンウィークは始まったばかりです。皆さんも色々と忙しいとは思いますが、こういった浮かれた風潮の時には事件・事故が起こりやすいものです。せっかくの休日が台無しになってはつまらないですから、みなさん、楽しみつつ、浮かれることなく体を引き締めてゴールデンウィークを満喫しましょう。

久々に日記を書いたら、土曜日の午前中の番組みたいな日記になってしまったぜ。

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