小論文と対決しよう
テキストサイト管理人の力はどれだけ通用するのか。始まりはそんな疑問からだった。
日々、アホな文章やらエロい文章から始まり、レビューやらお買い物日記やらするどい洞察やら短文ネタやら、それらの文章群をシコシコと書いてはウェブ上にアップロードしているテキストサイト管理人たち。
当然ながら、その文章群たちは世界中どこからでも読めるわけで、机の中にひっそりとしまわれて乙女心を綴ったり、「今日は先輩と目があっちゃった、うふふ」なんて書かれているダイアリーよりは多くの人の目に触れるわけである。もちろん、誰も読まないであろう町内会報の「季節のたより」とかいうクソみたいなコーナーよりは読まれるだろう。
それだけ多くの目に晒されながら日々文章をアップロードする。言い換えれば、ある程度の視線に耐えながらそれに見合う文章をアップしてるのだ。当然ながら文章を綴る能力はそれなりに上がっていくんじゃないだろうか。そりゃあ小説家やライターなんかは晒される規模が違うから敵わないにしても、乙女のダイアリーには勝てるんじゃないだろうか。
そんな思いから、僕はある種の考えに至った。果たしてテキストサイト管理人の文章能力は世間一般ではどの程度のものなのか。どの程度通用するものなのか。
ということで、私、小論文の試験科目がある大学を受験してみます。
何個か小論文試験を受験して、どれだけの大学に受かるのか。もしかしたら全部落ちるかもしれない。けれども、それはそれで実力が分かるというもの。本当は僕のようなカスよりもっと文章力があるサイトの管理人さんが適任なのでしょうが、やってくれそうにないので僕がやります。
ということで、今は必死に大学受験に向けて情報収集をしている段階ですが、もちろん備えはそれだけではありません。受験しまくって全敗とかマジ自殺物でリストカットですから、どうしてもそれだけは避けなければならない。つまりは、小論文を書く練習をしなければならなのです。
そこでまあ、準備をしましたよ。今を去ること数年前に小論文試験を経て大学名だけで女が股を開くような大学に合格した旧友であるKに連絡を取りまして、「なあ、大学受験するから小論文を教えてくれ」と懇願しましたよ。「お前、またトチ狂ったのか?大学受験て・・・」とか、生類憐みの令な勢いで返されましたけど、やはり持つべきものは友達、協力してくれることになりました。
でまあ、僕は小論文ってものが何なのかいまいちよく分かってないんですけど、そのKが言うには過去の問題を見て書く練習すればバッチリってことらしいので、色々と検索して大学入試問題を探したのですが、
『「世間」とは何か』(阿部謹也)から,日本人にとって周囲と折り合ってゆける限りで世間の中で生きる方が,競争社会の中で生きるよりは生きやすいのである,と述べた文章を読み,「世間」と「個人の生き方」との関係について,あなたはどのように考えるか。あなた自身の経験を織り交ぜながら,論じよ。(熊本大学・文学部/前期)
とか、難解すぎて満月を見た悟空みたいになりかねない問題が目白押しなんですよ。ハッキリ言いますよ、問題が分からないんじゃなくて、問題の意味が分からない。頭から煙でそうになったわ。思考回路はショート寸前だわ。
「いきなり過去問題はハードルが高すぎる、もっと簡単なのから頼む」と、友人Kに懇願したところ、「じゃあ、俺が出すテーマに沿って1000字以内で書いて来い、そしてそれを採点してやる、まずはそこからだ」というありがたいお言葉。
まあ、書いてるうちにダラダラと長くなる僕にとって「1000字以内」という制限は命すら取られかねない状況なのですが、とりあえずこれも制限文字内に収める練習です。何とか頑張ってやりましたよ。ということで、以下に友人Kから出された三つのお題と、僕なりに書いた1000字以内の解答を記載します。これを見て各々で「patoってバカだよね」などと噂してください。それではどうぞ。
「1.楽天家」
私たちマニアは楽天家だ。
どこの世界でもそうだが、マニアってやつはかわいそうになるくらい楽天的にできてやがる。例えばそう、ナース服マニアを考えてみよう。ナース服マニアは「ナース服のお姉さん」と聞くと何を連想するか。そう、大半のマニアがカワイイ美人のお姉さんがナース服を着ている姿を想像する。もしかしたらナース服にガーターベルトなどセクシーなものを想像するかもしれない。ブタみたいな婦長を想像するマニアは一握り、極稀としか言いようがないのだ。本当はブスなナースが大半を占めるというのに。
セーラー服大好きマニアは女子高生が大好きだ。でも、これもやはりカワイイ小悪魔的な女の子が制服を着ている姿を思い描いてしまう。もしくは純朴な女学生を。そう、クラスで一番カワイイ子級を平気で思い描いてしまうのだ。本当はそれよりも圧倒的多数の不細工女子高生が存在するのに。
人間が空想で思い描くとき、その中でも最上級かそれに近いものを思い描いてしまう習性がある。その中でもとりわけ熱い思いを持つマニアは、さらに最上級を思い描いてしまうのかもしれない。そう、これはただ何も考えずに楽天家なわけとは違う、思いあっての楽天家なのだ。
大好きが故に人より夢を見、そして思い敗れて傷ついていく。私はそんなマニアが愛しくてたまらない。叶わない最上級を思い描いて傷つきながら進んでいく、楽天家にこそマニアの真の美しさがあるのだから。
躍起になってプロ野球球団を持とうとしている某IT企業。果たして彼らは野球の理想を求めて躍起になっているマニアな楽天家なのか、それともただ儲かりそうだから名乗りをあげただけなのか。無類の野球好きの私は、社名からも分かるように真の楽天家であることを願いたい。
「2.原油価格上昇」
原油の一大産地である中東付近の情勢が不安定なことなどが影響し、原油価格が上昇している。それを反映して街ではガソリンや軽油の値上げが行われ、庶民の財布を切実に直撃している。ガソリンスタンドに掲げられた値段表示を見ながら、また値上げされたのかと嘆くばかりなのだ。
価格表示といえば、同時に最近見かけることが多くなったのが「セルフ」という表示。これはセルフサービス形式のスタンドであることを示す表示であるが、これが何となく淫靡な気がして我慢ならない。
そもそも、これは店員がガソリンを入れてくれて他にもサービスをしてくれる部分を省き、自分で入れることによって人件費分のガソリン代を浮かせるというのが目的のシステムで、どこのスタンドでもセルフ形式のところは普通のところより1Lあたり2円ほど値段が安い。おまけに、自分で入れるという行為が、なんだか一つの仕事をやり遂げたみたいで達成感がある。
安さゆえに私もよくセルフ形式のスタンドを利用するが、そのたびに良からぬことを想像してしまう。注入するあのノズルはセクハラかと思うほどに卑猥な形状をしているし、それを穴に突っ込んで液を注入するだなんて、猥褻にも程がある。おまけに行為中はビチョビチョと音がするのだ。若い年頃の娘さんなんかは注入中に恥ずかしくなって赤面でもしていると思うのだが、残念ながらそんな光景には出くわしたことはない。日本も随分と性に対してオープンになったものだ。
そもそも、セルフという形式は私たちの生活に、いや性生活に直結する部分がある。女性と毎日のようにおセックス、風俗に行ってフルサービスで行為を堪能する。相手がいる性的行為を通常のガソリンスタンドとするならば、私たちが毎日しているオナニーはセルフ形式と呼べるのだ。
セルフ形式は安上がり、これはオナニーにも言えることであるし、やり終えたあとの達成勘も等価である。やはりセルフ形式のスタンドとオナニーは同じなのだ。
ここで原油を取り巻く状況をもう一度考えてみる。石油資源の枯渇や石油燃料の燃焼による温暖効果ガスなどの環境への影響、そして価格の上昇。これらの要因があっても我々は車に乗ることも石油を消費することもやめないだろう。
それは、実際にはそんなことはないが、どんなに体に悪いと知りつつもオナニーを止めないのと同じだし、資源が枯渇する心配があっても精子を放出するのを止めないのと同じである。きっと、ティッシュの値段が爆発的に上がってオナニーをするにも高コストな時代が来たとしても、私たちはオナニーをやめないだろう。
現在、原油価格は昭和のオイルショック時以上の水準まで上がっているそうだ。あの当時は何故か民衆が紙を買い漁り、店頭からティッシュが消えたらしい。たとえ、またオイルショックが再来して街からティッシュが消えようとも、僕らはオナニーを止めないだろう。そう、それは分かっちゃいるけど止められない、貴重な資源を闇雲に消費する人類そのものなのだから。
「3.成人式」
数年前から、各地の成人式での話題がニュースを賑わすことが多い成人の日。チンドン屋のような格好をした頭の茶色い新成人が巻き起こすハチャメチャ成人式をメディアは必死になって流している。彼らには新成人としての自覚があるのだろうか。大人になった自覚があるのだろうか。どの報じ方もそんなスタンスだ。
しかし、そんなものは端から論じるのがおかしいお話で、彼らに大人になった自覚など毛頭ないのだ。実はこれ、よくよく考えると当たり前の話なのだ。
成人式を向かえた日にいきなり「おれ、大人」としたり顔で自覚される方がおかしな話で、そんなに流されやすい人間は逆に変な壷やらヘッドギアを買わされる羽目になるんじゃないかと心配になる。
彼らは大人になっていないのだ。だから久々に旧友や初恋の相手が集う成人式が嬉しくてはしゃぎすぎてしまう。中にはとうに大人だと自覚している人もいるだろうが、そんなのは個人差。誰もが20歳で自覚できるわけではないのだ。
私が自分が大人になったと自覚することになったきっかけは二つある。一つは自分の稼いだ金だけで1ヶ月暮らしきった時だ。初めて給料を手にし、自分が自活できたと感慨深い瞬間だった。
もう一つは、キリンは「キリーン」とは鳴かないと知った時。朝っぱらの路上でウィッキーさんが「ウィッキー!」と叫ばないのと同じように、キリンもそう鳴かないと悟った時、博識になった自分を大人だと悟った。
一個目の自覚は大学を卒業した22歳の時、2個目の自覚は27歳の時。どちらも成人式よりずっと後のことだった。
とりあえず、成人式で暴れている新成人はまだ自覚がないのだ。けれども、そのうち嫌でも自覚することになるのだから、とりあえずそっとキリンは「キリーン」とは鳴かないと教えることから始めたらどうだろうか。
友人K君の採点
1.楽天家 視点は面白いが、書いている内容が下品すぎる。
2.原油価格上昇 あまりふざけるな。それに文字数を大幅にオーバーしている
3.いい加減にしろ
結論:小論文で受験はやめておいた方がいい
ということで、親愛なるK君の助言もあったことだし、大学受験はやめておこうと思います。良いところばかり見る楽天家じゃないからね、僕は。