チカラ

チカラ

「殺してやる〜!」

「うわーーー!」

先日の休日のことでした。遥かアテネの地ではフレッシュに頑張る日本選手団がいて、その中には金メダルとか取っちゃう人とかいて世界レベルで大活躍しているというのに、僕はというとダメ人間っぷりをいかんなく発揮して昼過ぎまで寝ておりました。

燦燦と照りつける太陽の光を感じつつ、今時「日本むかし話」でも出てこないぜっていうようなボロ布団の中でまどろんでおりましたところ、冒頭のようなセリフが聞こえてきたわけです。

暑くて暑くて寝苦しく、かといってクーラーを入れたのでは寒すぎる(リモコンをなくしたので温度調節が出来ない)。それで窓を開けて寝たわけなんですが、どうやらアパートの前の道路で叫んでる様子なのです。三階の部屋まで聞こえてくるんですから相当大きな声で叫んでいたのでしょうね。

「殺してやる」「おたすけー!」ってな感じの尋常でないレベルの修羅場に起き抜けに遭遇し、僕も焦ってるんだか眠いんだか夢見てるんだか訳分からない状態だったのですけど、それでもやっぱり驚くじゃないですか。殺してやるだなんて普通じゃない、何事かとベランダに出て声がするほうを見ましたよ。

そしたらですね、遥か階下の道路では頭の悪そうな子供が2人、何だか知らないけど物凄い勢いでじゃれあってましたわ。ランニングを着て真っ黒に日焼けした男の子が色白なもやしっ子に襲い掛かり、「殺してやる!」と凄んでいたのです。

まあ、ここまでなら、おうおう元気な子供達よのーと思うだけで終るのですが、それだけでは終ってなかった。なんかですね、よくよく目を凝らしてみるとですね迫ってる男の子の方、どっから持ち出したのかサバイバルナイフみたいなの振り回してるんですわ。

もう刃渡り15センチはあるんじゃねえの?っていう凄く切れそうなサバイバルナイフで、下手したら攻撃力以外に道具として使ったら別のアビリティまで使えそうなナイフを持っておりました。

いやね、いくら夏休みだからって子供がサバイバルナイフ振り回しちゃイカンですよ。そろそろ夏休みの宿題も追い込みの時期、差し切れるか刺し違えるかという修羅場のはずなのに、こんな別の場所で修羅場を演じてやがる。

最初こそは「おうおう、じゃれあってるなー、元気があってよろしい!ワンパクでもいい逞しく育って欲しい」とか思ってたのですが、片方がサバイバルナイフを手にしているとなれば話は別です。急速に「殺してやる」というセリフが現実味を帯び、抜き差しならぬ修羅場であることが間違いなくなるのです。

まあ、なんとかその場はどっかから大人が出てきて鎮めていたのですが、下手したら休日の寝起きにバイオレンスな殺人現場を見ていたのかもしれません。

それにしても、最近の子供ってのは怒りっぽいですね。つくづく思います。食い物が悪いのか環境が悪いのか知りませんけど、とにかく怒りっぽい。いやいや、怒りっぽいというよろはキレやすいのかな。とにかく感情の沸点が低すぎるんですよね。

それこそ一時期流行した少年少女による凶悪犯罪やら傷害事件やら感情の沸点が低いとしか言いようのない事件も数多くありますし、日常でも数多くのキレやすい子供を目撃します。

何でもすぐテレビアニメやゲームに原因を持っていくのは好きではないのですが、どうにもこうにもああいう物の影響が少なからずあると思えて仕方ない。

いやね、マンガとかゲームでもそうなんですけど、主人公が追い込まれたりするじゃないですか。圧倒的力量差がある相手を前に追い込まれる。そこでキレるわけですよ。民衆が無残にやられたり、知ってはならない事実を知ってしまったり、それでキレるわけ。

でさあ、キレると強くなるじゃん。大抵のキャラが強くなるじゃん。ふおおおおおおおお!とかなっちゃったりしてさ、相手も「ば、ばかなっ!」とか言っちゃったりして、スカウターとかぶっ壊れるの。もう見てらんない。

キレた主人公が敵を倒してめでたしめでたし。やっぱキレると強いのね、ってなるじゃないですか。ああいうのってね、ホントいい加減に止めた方が良いと思う。ああいうのって間違いなく悪影響だよ。

人間はね、キレたって強くならない。ふおおおおおおと戦闘能力が上がるわけでもないし、強くもならない。それどころか冷静さを欠いたりして正常な判断が出来なくなり、どっちかというと弱くなるんじゃないかな。

僕が小学生だった頃、梅津君の家で梅津君とアーバンチャンピオンという闇雲に殴り合うだけの野蛮なファミコンゲームをしてたことがあるのだけど、梅津君が持ち主とは思えないくらい弱いの。

で、僕が何度も何度も対戦に勝っちゃって、梅津君が操るキャラをバンバンとマンホールに落としてたんだけど、そのうち梅津君が怒り出しちゃってさ。やっぱ持ち主というプライドだとか譲れない何かだとか色々あったんだと思うよ。

ぐおおおおおおおおおおおおお!

とか声に出して叫ぶくらい必死になってAボタンを連打してキレてたんだけど、やっぱ弱いのよね。もう見るからに弱い。キレる前より数段弱くなってるの、これが。

「もう一回!もう一回!」

負けるたびに大塚愛さくらんぼみたいに連呼していた梅津君、もう鼻から目からグチョグチョした液体出してさ、汚いったらありゃしないんだけど、何がそこまで彼をアーバンチャンピオンに駆り立てるのか、って思いながらバシバシ勝ってた。

結局ね、人間はキレたって強くならない。それどころか弱くなる。だからね、マンガとかゲームとか、キレて強くなってドカーンと勝つとかいい加減やめた方がいい。

そういうのばっか見てるとキレると強くなるだとかキレるのカッコイイだとか、頭の悪い子だったら勘違いしちゃうからね。

影響されたキレやすい子供達がナイフ片手に簡単にキレて人を傷つける。なんとも末期的な世の中だけど、人間はそんなに簡単にキレちゃいかんよ。ましてや人を「殺してやる」だなんて簡単に言うもんじゃない。

なんてことを考えながら、アパートの前だから別にいっかと寝起き姿の、つまりはパンツ一枚の状態でアパート入口のところにある自動販売機にお茶を買いに行ったのですが、そしたら朝帰りだか昼帰りだか知らない濃厚なセックスを営んでそうなブサイクカップルが手を繋いで帰ってきて

「やだ、あの人、パンツだけ」

「うわー、終ってるなあ」

と、せせら笑うように会話していました。

なんていうか、キレた。2人まとめて散弾銃で殺したい。

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