若者をぶっとばせ
最近、若者のマナーの低下が叫ばれています。
渋谷なんかに行くと、地べたに座る若者やゴミのポイ捨てをする若者、とても通常の精神の持ち主とは思えないメイクをした若者など、数多く見ることが出来ます。
戦時中、この国のために命を落として言った人々に、現状の渋谷を是非とも見ていただきたいと思っているのですが、そういうことを嘆いても何も始まらないような気がしてなりません。
そもそも、いつだってオッサンってのは若者のことを苦々しく思っているものです。僕らが10代後半くらいの頃だって、周りのオッサンはしかめっ面で見ていたに違いないのです。
そんなこんなで、「若者のことを訝しく思っても仕方ない」と、自分的にも若者どもを大らかに見てあげたい気持ちがあるのですが、ところがどっこい、人間ってのはそんなに綺麗にできているものではないのです。
大らかにしなきゃ、大概の事は許してあげなきゃ、と若者に触れる度に思っているのですが、どうしてもコンビニ前にたむろする若者だけは許せない。許されるのなら散弾銃でぶっ放してやりたい、そう思っているのです。
他に娯楽のない田舎町ほど夜のコンビニに若者がたむろする、と言います。未だにミサンガが流行している地域であるウチの近所でもその傾向は強く、毎夜毎夜、深夜になるとシャコタンブギみたいな車がコンビニに集い、明け方まで店先で大騒ぎしています。
何が楽しいのか知りませんが、店先の駐車用の縁石に腰かけてですね、鳥の巣みたいな頭をした若者がゲハゲハと談笑しあう、これがもう我慢しがたいほど腹立たしい。
でもまあ、いくら僕かてただ若者がコンビニ前でたむろしているだけで腹を立てているわけではありません。いくら僕が短気だといっても、それだけで腹を立てるわけがありません。ちゃんと、僕が彼らを憎む正当な理由があるのです。
あれは、1ヶ月ほど前の夜のことでした。
急に空腹に襲われた僕は徒歩でコンビニへと向かったのです。徒歩でいける場所にコンビニがあるってのは素晴らしく便利だよなー、そう思いつつ、7の看板のお店へと歩を進めたのです。
コンビニ前には、まるで街路灯に群がるそういう虫みたいに若者がたむろしておりました。マンガの中にしか登場しないようなハイパボリックの頭をした若者や、明らかに仲間内では”公衆便所”とか呼ばれてる頭も尻も軽そうな女の子がいました。
通り際にチラッと会話を盗み聞きしたのですが、誰と誰がやっただの、誰々がムカつくからしめるだの、そういった日本経済には何ら影響を及ぼさないであろうことを話し合っておりました。
ふっ、まあ、コンビニにたむろしたい気分だってあるわな
そんな大らかな気持ちで彼らの横をすり抜け、店内へ。彼は食ったもののゴミとかポイポイと投げ捨て、明らかにマナーもクソもなかったのですが、それでも健やかな気持ちで眺めていました。
いつものようにお茶やら食い物やら、それと忘れてはならないエロ本を購入しましてね、颯爽と店を出ましたよ。相変わらず店の前にたむろしている若者はクソ邪魔で、迷惑以外の何者でもないのですが、それでも大らかな気持ちで通り抜けました。その瞬間でした。
「なー、コンビニでエロ本買うとかありえなくねー?」
たむろする若者の一人、その中のリーダー格の男が言いました。間違いなく僕の手に持つビニール袋の中のエロ本を指し、そう言いました。
「だよなー、っていうかエロ本買うってのが信じられない」
「そういうの買う人ってモテないんだよ、可哀想なんだよ」
それに応じるようにしてエロ本を貶める若者達。帰り行く僕の背中に正に後ろ指を差していく若者達。なんというかな、すげえ泣けた。
確かにですね、セックスと暴力に明け暮れている若者達から見たらエロ本を買うオタクなオッサンってのは物笑いの種だと思いますよ。でもですね、そういった人々を指差して笑う、そういうのってゴミのポイ捨て以上にやってはならないことだと思うんです。
あまりの悔しさにその日は泣いて暮らし、彼ら若者を忌み嫌ったりしたのです。それこそ「ジャイアン殺して僕も死ぬ」と言ったのび太の心境で沸々と殺意という名の悪魔を育てたものです。
こうして僕は、コンビニ前にたむろする若者を大らかな気持ちで見れなくなり、その日以来、いかにして彼らをギャフンといわせるか、いかにして彼らにたむろを止めさせるか、そればかり考えて暮らしている僕ですが、本日、その考えを改めざるを得ない事件が起こりました。
本日深夜、台風6号の接近の影響でしょうか、街は暴風に大雨にとてんやわんやの大騒ぎでした。それでも、ライフラインはコンビにのみの僕はコンビニに行くしかなく、ぐおおおおおおと強風に真っ向勝負で立ち向かって近所のコンビニに行ったのです。すると、
なんか、いつもの若者がコンビニ前にたむろしてた。
いつものようにグループではないのですが、リーダー格の若者が一人、それこそ未曾有の雨風をベチベチト受けてですね、それでもコンビニ前にいるんですよ。さすがに路面はビチョビチョですから座っていないんですけど、何かを待ってるかのように嵐の中を仁王立ち。何が彼をそこまで駆り立てるのか知りませんけど、とにかくびしょ濡れになって仁王立ち。
なんだ、最近の若者もなかなか見所あるじゃないか。
台風でも諦めずたむろする若者。その姿に感銘を受けた僕は彼のことを見直し、憎しみなど忘れて尊敬の念すら抱いたのでした。うん、ひどく感心しながら飯と飲み物とエロ本買って帰った。
ダメだダメだ言うけど、最近の若者もそうそう捨てたもんじゃない、そう思う事件でした。
まあ、台風の日も欠かさずにコンビニでエロ本買う僕も、たむろする若者も同じくらいダメダメなんだけどな。