爽やかな朝

爽やかな朝

爽やかな朝。心地よい目覚め。

僕らは太陽と共に生きる生物ですから、やはり朝日と共に目覚めると気持ち良いものです。

僕の仕事場は比較的フランクで、あまり遅刻に厳しくないといった側面があります。しかしながら、やっぱりゼッタイに遅刻してはいけない日というのもあって、毎週月曜日と水曜日だけは諸般の事情で遅刻が許されないのです。この日に遅刻したら首になってもおかしくない。

そんなこんなで、遅刻して良い日と絶対にしてはいけない日が交互にやってくるような状態ですから、物凄く生活のリズムが狂うのですよね。

遅刻していい日は、だらけきって大遅刻しまくり。そうなってくると次第に夜型の生活リズムにシフトしていきますから、遅刻してはいけない日に起きるのが辛くなります。間違っても寝坊などできないですから徹夜で起きてて出勤するという手段を取ります。そうするとまたリズムが狂う。

そんなこんなで、現状の僕が清々しい朝を迎えるというのはあまりなく、徹夜明けで黄色い太陽だったり、朝というよりは昼に近いような太陽だったり、「やべー遅刻だ!死ぬ!死ぬ!」とテレポーテーション能力を切望するような状態だったりするのです。

しかしながら、まれに生活リズムががっしりスクラムを組んで合致することがありまして、リズムが狂いすぎるあまり一周して正常のリズムに戻っちゃった!ということがあったりするのです。そういう朝の清々しいこと清々しいこと。

つい先日もそんな状態で久々に爽快な朝を迎えました。

いつもは余裕ないのであれですが、まずはベランダに出て布団を干したりします。天気も最高、時間もまだまだ余裕。窓の外では二匹のスズメが仲睦まじく飛んでいて、下に見える道路では小学生が集団登校しています。なんて素敵な朝なんでしょうか。

さあて、そろそ出勤するか、とスーツを着ます。で、一回出勤途中にウンコしたくなって括約筋が大活躍の悪夢のドライビングをしたことがありましたので、そういった悲劇を繰り返さないようにトイレへと向かいます。

よーし、爽やかな朝だし、いっちょ豪快にウンコでもして出勤するかーと意気込んで、物凄い勢いで便器に座りました。その瞬間でした。

がぽっ!

見事に尻が丸ごと便器に吸い込まれる。もう、下手したらそのまま流れちゃうんじゃないかって勢いで便器に飲み込まれたからな。

なんか、便座が上がってた状態なんですけど、それが下りてると勘違いしちゃったみたいで見事に便座が上がってる便器に座っちゃいましてな、半分尻を出した状態で見るも無残なことになってた。便器に喰われかけの人みたいになってた。

しかもな、その状態になると起き上がれないのよ。ガッポリと尻が便器にフィッティングしてますし、足は虚しいほどに虚空浮いた状態。手はかなりフリーな状態ですが、近くに捕まるものがありません。もう、裏返った亀みたいな状態。

やばい、下手したらここから抜け出せないかもしれない。

こんな状態でずっと抜け出せず、餓死でもしようものなら目も当てられません。数ヵ月後に異臭がすると隣の部屋の住人から通報。発見した刑事とかも笑いを堪えるのに必死で鑑識も笑ってばかりで仕事にならない。Yahooのトップには「便器にはまって怪死-27歳独身男性、孤独の恐怖-」と書かれるにちがいありません。で、各ニュースサイトでおバカな事件として報じられるわけです。

やばい、それだけは絶対に避けねばならない。

なんとか必死にもがいて便器から脱出しようとする僕。爽やかな朝、こんな町の片隅のアパートの一室、それもトイレの中で生死を賭した戦いが行われているとは誰も思うまい。

結局は、ちょっと無理な体勢に体を捻れば易々と便器から脱出することが出来たのですけど、ズボンは便器に浸ってビチョビチョな状態。おまけに少しアンモニア臭がします。

僕はスーツを一着しか持っていませんから、泣きながらズボンを洗濯し、アイロンで無理矢理乾かして出勤しましたところ、見事に遅刻しました。すげー怒られた。爽やかな朝なんてクソだ、いや、せっかくの朝がクソのせいでクソなものになったと言うべきか。

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