違反者講習に行ってきた-前編-

違反者講習に行ってきた
-前編-

ぐおー、免停になったああああ

先月の日記でのたまったことは皆さんの記憶に新しいと思います。

運転免許を取得しており、車などを運転する方は分かるかと思いますが、我々が違反で検挙されると反則点数というものをいただきます。シートベルト装着義務違反だと1点、一時停止違反だと2点と、違反の悪質さに応じた点数を頂戴するのです。

その点数が6点貯まりますと晴れて免許証停止となります。30日間の免停を賜り、その間は運転できません。しようものなら無免許運転と同じ扱いになるのです。

累積点数が重なるにつれて30日、60日、90日、120日、180日と免停の日数も長くなります。で、その処分の最上級に君臨するのが違反点数15点以上、免許証取り消しです。免許証取り上げられて最初から取り直し、しかも最低一年間は再取得できないという、行政処分の役満みたいなヤツです。

そんなこんなで、違反点数に応じて手厳しい処分が用意されているわけなんですが、つい先日のNumeriキャラバン2004道中で一時停止違反を犯し、見事警察にキャプチュード、晴れて違反点数6点を突破した僕は免許証停止処分となったのです。うん、30日免停。

しかも、免停が確定しても、免停処分の発動までは何日間かあるのですが、そのエアポケットのような期間にまたもやシートベルト違反で捕まるという体たらくぶり。どうなってんですか。なんかコレやるとですね、自動的に免停がランクアップして60日になるらしいんですわ。ホント、60日も免停になった日にゃ、運転の仕方なんて忘れるよね。

そんなこんなで、お見事に免停と相成ったわけなんですが、行政側も「おまえ、免停!」なんていう手厳しい事はいきなり言ったりはしません。ちゃんと最後のデッドライン的温情でですね、挽回するチャンスを残してくれているんですよ。それが「違反者講習」なる制度です。

この制度の素晴らしいところはですね、違反を重ねて6点に達したとしても、即免停にならないところなんですよ。以前は違反点数が6点に達したら即30日免停、「免停講習」なるものを1日かけて受講して29日短縮したとしても確実に1日は免停になっていたのです。しかも、違反点数は6点のまま、前歴1回という烙印を押され、次にちょっと違反すれば60日免停が待ち構えていたのです。なかなか厳しい処置です。

そこで導入されたのが「違反者講習」ですよ。これは軽微な違反(3点以下)の繰り返しで6点になった人は、最初の一回に限ってチャラにしてあげましょう、ってヤツなのですよ。「違反者講習」を受ければ免停にならない、しかも受講後は6点の違反点数を消去、前歴だってつかない、という素晴らしいものなのです。まさに免停界の敗者復活戦。これを受講しない手はありません。

受講しなければランクアップした60日免停、受講すれば全てがチャラ。当然ながら僕だって受講したい所だったのですが、「違反者講習のお知らせ」が我が家に届いたのは今まさに引越しで広島を離れようとしている時でした。

そんな時に1日かけて講習を受けることなど出来ません。おまけに遠く離れた広島の免許センターに行くことなど出来ませんし、何より、新しい職場に慣れるのが精一杯でそんな暇はありませんでした。

でまあ、この通知が来てから1ヶ月の間に違反者講習を受けなければ自動的に一ヶ月目の日から免停と相成るわけなのですが、なす術なく無情に一ヶ月経過、4月後半の日記に記した「免停になった!」という記述に繋がったのです。

しかしながら、神は我を見捨てていなかった。広島の免許センターに事情を説明しましたところ、「引越しという事情があるなら仕方ありません、特別に受講できるようにしましょう。それも新しい土地の免許センターで受けられるようにします」という、神のお導きとしか思えない慈愛に満ちたお言葉が。ホント、この免許センターおばさんにクンニぐらいならしていい、そう思うくらい有難かった。

そんなこんなで、新天地の新住所に再度「違反者講習のお知らせ」が届き、晴れて敗者復活戦に望める権利を手に入れた訳なのです。せっかく手に入れた権利を逃してなるものかと、平日しか講習をしてないですから有給休暇を駆使してですね、入りたての新人に2日間しか与えられていない貴重な有給休暇を駆使してですね、違反者講習に行ってきたんです。

違反者講習の拘束時間は鬼のように長いです。そりゃあ6点の違反と30日免停を帳消しにしてあげようっていうのですから、自ずと拘束時間が長くなります。それくらいはやって当然。

まず、朝は8時半に集合、それから午前中は運転シミュレーターだとか実際に車に乗ったりとかして安全運転講習があります。で、午後は座学でみっちりむっちりと安全講義、夕方までこってりしぼられます。

朝8時。遅刻しては全てが台無しだと、早起きした僕は車に乗って免許センターに行きました。従来の免停講習では最低でも1日は免停になるので車に乗って受講にいけませんが、この敗者復活戦なら免停になりません。ですから、ブリバリと車に乗って行けるのです。

で、位置関係が良く分からない免許センター内を徘徊し、やっとこさ違反者講習会が開催される教室を探し当てたのです。なんか、僕が一番乗りでした。

教室内には「酒を飲んだら乗らない!」だとか、「目指そう!一年間無事故無違反!」だとかの標語がデカデカと相撲取りみたいなフォントで貼られていました。

「なんだかなー」

と思いながらそれらの標語を眺めていましたところ、次々と他の受講者どもがやってまいりました。大体この日の受講者数は17人ほどでした。

なるほど、どいつもこいつも違反点数が6点になっただけあって、なかなか曲者な顔つきをしてるじゃないか。集まった受講者の面々を見てそう思いました。

やはり、違反をしまくって6点に達するなど尋常な状態ではありません。普通はそんな検挙されませんし、ましてや免停の危機になど直面しません。そう、ここに集まった面々は言うなれば交通社会のクズの集まりです。クズを救ってやろうという敗者復活戦にヨダレを垂らして集まったクズ中のクズなのです。

若い生娘など一人もいません。清純でおしとやか、それでいて可憐な生娘は交通違反などしません。恐る恐る車を運転し、速度も常に制限速度の半分以下。ちょっとしたクラクションの音などでビクッとする。もちろん、普段は裸眼だけど車の運転をするときだけは黒ブチのメガネです。で、初心者期間を過ぎているのに「怖いから」という理由で初心者マークを外しません。やばい、萌え死ぬほどに萌えすぎる。

いやいや、萌えの話なんかはどうでもよくて、とにかくこの違反者講習にはそんな萌えるような女性は一人もいません。今回の講習に参加していた面々で目立っていた人物を適当にニックネームをつけてピックアップすると、

[幽霊女]−見た目が幽霊のような女性。目が合うだけで取り殺されそうな気配を漂わせていました。ややヤンキー女風。30代後半と推測され、明らかに車の運転とか荒そうでした。たぶん、ワゴンRとか乗ってるに違いない。

[ハッスル爺さん]−60は軽く越えているであろう爺さん。そんな歳にもなって免停になるほど違反を重ねているのですから頭が下がります。もう歳なんだから落ち着こうぜ、爺さん。そう言わずにはいられない人でした。

[ヒップホップ]−ヒップホップを嗜んでるとしか思えない風貌の若者でした。ジャラジャラとアクセサリーをつけ、室内なのに「スキーにでもいくの?」と言いたくなるような帽子をかぶってました。ちなみに彼は教官の人に注意されても頑として帽子を脱がなかった。子供か。

[ボンボン]−見るからにボンボン、匂いもボンボン。金の匂いがプンプンした。高いスーツ着て颯爽と講習会場に現れました。たぶん、人を殺しても会社社長をやってる親父の部下かが身代わりとして出頭しそうな、そんな感じのボンボンでした。すげー高価そうな時計してた。

[ヤクザの妾]-見るからにヤクザの妾っぽい風貌でした。なんか、顔とか雰囲気はそんな感じでしたが、着ている物はやけに貧相。ヨレヨレの黒のTシャツで、背中の部分に「びっくりぃー」という文字が、やけにポップなフォントでプリントされてました。こっちがびっくりぃーだわ。

[チャトラン]-チャトランに似てた

こんな面々と机を並べて座りつつ、「やっぱり免停一歩手前まで行くヤツはクズだ」そう確信していました。明らかに顔ぶれが異様、間違いなく社会の平均値から大きく逸脱した面々です。もしかしたらパチンコ屋の開店待ちをする面々より酷いかもしれない。何で僕のような高貴な人間が、末は皇族かと噂されるほどの僕がこのような輩と机を並べなければならないのか、そう憤慨していると、本日の講習を担当する教官の方が颯爽と来られました。

「えー、皆さんは違反を繰り返し、その点数が6点に達したためこの講習会に集められたわけです」

教壇みたいな場所に立ち、颯爽と説明する教官。それを受けてサッとヒップホップの手が挙がりました。

「あのー、おれ、6点も違反してないんっすけど」

いいから黙ってろ、小僧。そんなことありえないんだから、アンタ6点分キッチリ違反したんだから、だからココにいるんだろ?変な自己主張すんな。黙って座ってろコンコンチキが。そう心の中でツッコミを入れていました。

そしたら、そのヒップホップの意見に触発されちゃったハッスル爺さんがですね、「ワシもワシも、6点も違反してない」と鼻息も荒く手を挙げる始末。もう。収拾がつかない。誰かなんとかして。

結局、ヒップホップのバカが「6点分の違反」と「6回の違反」を決定的に取り違えていたのが原因だったらしく、ヒップホップも爺さんも軽く諌められ、何事も無かったかのように説明が進行しました。

「まず、受講代金を収入印紙で購入してください。それから書類を書いてくださいね」

そう言われ、ワラワラと受講代金を払い込むクズども。14000円くらいの受講代金を払いつつ思いましたよ、こんなクズどもに囲まれて今日一日を乗り切れるのだろうか、本当に大丈夫なんだろうか。もしかしたら、感化されて僕までクズになってしまうんじゃなかろうか。そんな不安がよぎりました。クズに囲まれるとか、正直言って嫌過ぎる。苦悩に満ちながら書類を記入しました。

「はい、では書類が書けた人は、違反者講習通知と一緒に提出してください」

え・・・!?違反者講習通知って持ってこなきゃダメなの?

アパートに届いた違反者講習開催を告げる通知。なんか、それが事務処理で必要だったらしく、提出しろと言われました。

やっべえなあ、いらないと思って忘れてきちゃったよ。いや、正直に言いうと、読んですぐ捨てちゃったよ。やっべえなあ・・・と思いながら周囲を見回すと。

僕以外全員持ってきてる!

ヒップホップもハッスル爺さんも、ヤクザの妾もチャトランも、みんなガッチリと違反者講習通知を持ってきていました。忘れたのは僕だけ。

コイツらは全員クズだ!クズだ!クズだ!クズだ!と連呼してきましたが、そのクズに囲まれ、一人だけ忘れ物をするという失態を演じた僕はクズ中のクズ、クズの最右翼だと言うことを悟ったのでした。もう死にたい。

後編に続く

ありえない運転シミュレーター、殺戮の実車指導、阿鼻叫喚の生き地獄。クズどもはそこに明日への希望を見出した。僕らクズだって・・・運転していいんですか・・・?謎の呪文「ペーパ」が響き渡る。そして僕らは利権構造の汚さに触れた。そして心が1つになった。

乞うご期待!

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