ある日・・・

ある日・・・

僕らが大切にしている日常なんて、いとも簡単に壊れてしまうのです。

今日は芳江ちゃんと喧嘩しちゃった、明日仲直りしなきゃ。
今日はお母さんに酷いこと言っちゃったな。
憧れの渋谷先輩と目があっちゃった、きゃー。
うわー、こんなに沢山の宿題なんかできるわけないよ。
がー、なんで!エロ本が!机の上に!置いてあるんだ!
やべ、山田に借りてたエロビデオ、テープが切れちゃたぜ。

なんてことはない日常のワンシーン、学校や職場、家庭でのこと、そこでの恋愛感情や愛情や友情関係、それらは全て容易く壊れるのです。

例えば、今大地震が来たらどうでしょう。未曾有の大震災はアナタの学校や職場を跡形もなくしてしまうかもしれません。生きていくのに精一杯で、そもそも学校や職場なんて関係なくなるかもしれません。友人とは散り散りになるでしょう。大好きな人の安否さえ分からないかもしれません。今と同じ日常は過ごせなくなる「ある日」は明日にでも、今にでもやってくるかもしれないのです。

大地震だけでなく、それが驚異的危険レベルの伝染病だったり、他国の侵略による戦争だったり、隕石の脅威だったり、宇宙人の襲来だったり、核戦争だったり、要因は様々です。日常を全ておじゃんにする脅威は様々、それだけに僕らは今という日常を大切に生きなければならないのかしれません。

何も、地震だとか戦争だとか核だとか、そんな大きなスケールの脅威だけでなく、僕らの日常の中にも脅威はあります。それは本当に些末な脅威かもしれませんが、それでも個人レベルで日常を破壊する、なかなか侮れないものなのです。決してグルーバルに日常を破壊するものではありませんが、個人レベルで破壊する、そんな深刻なものなのです。

僕が中学生の頃でした。僕の中学では体育祭の時にクラス全体でお揃いのハチマキを手作りで用意するという微妙に意味の分からない風土がありました。体育祭の一週間前くらいからクラスの女子が家庭科室にこまり、買って来た布を切って縫ってハチマキにする、そんなものでした。

体育祭終了後に好きな男子のハチマキを貰う、とか脳みそが腐ってるとしか思えないムーブメントが女子の間で起こったため、非常に重要な役割を担っていたものでしたが、当然ことながら僕のハチマキは貰い手などなく、いつも母ちゃんが洗濯物を吊り下げるのに使っていました。

貰い手がないものですから、僕はハチマキに毛ほどの興味がなかったのですが、ある年の体育祭、ハチマキ係なるものに任命されてしまい、興味を持たざるを得なくなったのでした。

まあ、ハチマキ係といっても与えられた仕事と言えば一緒に任命された女子と2人でハチマキに使う布を買いに行くというものでした。うん、与えられる仕事はそれだけ。しかも色とか模様だって事前に学級会で決めますから、係の者は決められたものを買ってくるパシリみたいな位置づけでした。しかし、このハチマキの布を巡って事件は起きたのです。

ぶっちゃけて言うと、一緒にハチマキ係に任命された女子は、僕が密かに心の中で好いている女の子でした。その女の子と2人っきりで布を買いに行くことが出来る、それが想像を絶するほどの喜びで、今すぐにでも街を練り歩きたい気分でした。

「電車に乗っていかなきゃいけないね。今度の日曜日行こうか?」

彼女が言います。僕の住んでる街は最強に田舎な場所でしたから、何か買うにも都市部へと電車で出て行かねばなりませんでした。電車に乗って都市部へと行き、一緒に布を買う、これはもうデートと言っても過言ではありません。恥ずかしがらずにハッキリ言うと、この事実だけでその日五回くらい抜きました。

そして当日、地元の駅で彼女と待ち合わせをした僕でしたが、微妙に寝坊。興奮しすぎて前の日寝つけなかったのも原因かもしれません。「なんで起こさなかったんだよ!クソババア!」と何も悪くない母親に悪態をつきつつ、遅刻してはならんと大車輪の勢いで身支度を整えました。そこに異変が。

「・・・ウンコしたい」

今すぐにでも家を出なければ間に合わない状況、そこに神の悪戯の如き便意。やばい、どうしよう、ウンコをしてたら間に合わないかもしれない。かといってウンコをせずに家を飛び出したら待ち合わせ場所に辿り着けないかもしれない。よしんば辿り着いたとしても、ズボンの裾から変なものをボロボロとこぼしながらかもしれない。やばいやばい。

迷いに迷った挙句、瞬殺でウンコを出すことを決意。ドアを蹴破る勢いでトイレへと駆け込み、ズボンを下ろすか、ブツを出すか、どちらが早いかといった勢いでウンコをしました。非常にウエットなブツがぶっ壊れた蛇口みたいに排出されました。たぶん、20秒もかからなかったと思う。

よっしゃ、なんとか瞬殺でウンコできたぜ、これで待ち合わせに間に合うな。そう思ってトイレ前方を見る僕、我が目を疑いました。

紙がない・・・・。

いつもは誇らしげにトイレットペーパーが咲き誇ってるであろう場所にトイレットペーパーのカケラすら見当たりませんでした。ただ茶色いトイレットペーパーの芯だけが哀愁を漂わせて佇んでいました。

やばい、このままでは間に合わない。ただでさえ1分1秒を争っている場面なのに、ここでドアを半分だけ開けて手だけ出して「母ちゃん紙ー」なんて要求している時間はない。耳が遠くてトロい母さんのことだ、紙を用意するのに時間がかかるに違いない。

えーい、もういい、どうなってもしらんわ!

迷いに迷った僕は尻を拭かずに出かけることを決意。何事もなかったかのようにパンツをはいてズボンをはき、家を飛び出したのでした。ウエットなクソで汚れまくったアナルをぶら下げて。コレが悲劇の始まりでした。

鬼の形相で自転車を走らせ、彼女の待つ地元の駅へ。なんとか遅刻することなく、秒単位のギリギリさで彼女と落ち合い、予定通りの電車に乗る意ことが出来ました。よかった、あそこで尻を拭いてたら間違いなく間に合わないところだった。

「大丈夫?すごい汗かいてるよ?」

もう秋口になろうかという涼やかな季節であるのに、車内ではハァハァ言って僕を気遣う彼女。優しい子や、素敵な子や、こんな素敵な娘さんとこれからデート。考えただけで胸が高鳴り、またもや汗がどっと噴出すのでした。

車内では取り留めのない会話をしつつ、なんとか僕の好印象ポイントをアッピール。それと同時に彼女が普段学校では見せない一面が見れちゃったりして嬉しいものでした。一時間ほど和気藹々と会話していたら目的の駅に到着。すっかり打ち解けた僕らは仲睦まじく布屋を目指して歩くのでした。

今でも覚えてます。商店街の一角にあったその布屋は、当時大ブレイク中だった不良ファッションの店(ボンタンや短ラン、特攻服、極悪な制服ボタンなどを販売)の隣にありました。ファンシーな布ショップと、不良ショップの店先に展示してあった平安時代の貴族がはくような極悪なボンタンのコントラストがなんとも素晴らしかった。

でまあ、ファンシーな布屋を目指して彼女と歩くんですけど、そこで異常事態発生。もはや日常とかデートとかどうでもよくなるような、そんなのっぴきならぬ事態が大発生。ハッキリ言って未曾有の展開だった。

いやな、尻の穴が痒くなった。

もう、普通に痒いとかのレベルではなく、下手したら狂うんじゃないか、なんか小さい小人みたいなのが槍もってケツの穴を暴れまわってるんじゃないかって痒さだった。

どうもね、出掛けにウェットなウンコをしたのに尻を拭かずに出てきたじゃないですか。その時にアナルに、いやアヌスについていた残骸がですね、時を経て硬化、掻き毟りたくなるほどの痒みをプロデュースしやがりやがったのですよ。気が狂うかと思った。

ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。
アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。

さっきまで楽しいデートをしていたのに、考える事はアナルのことばかり。もう気が気じゃない状態でした。

でまあ、さっきまでは好きな子とのショッピングを楽しみ、間違いなく僕の中での日常というフィールドを楽しんでいたのですが、尻が痒くなった瞬間から全てがどうでもよくなった。恐ろしいよな、あんなに大切な日常だったのに、尻を拭かなかっただけでどうでもよくなるなんて。

とにかく尻を掻き毟りたい、許されるのならばズボンを脱いで今ココで掻き毟りたい。釘抜きみたいな道具でガリガリとやったりたい。尻こ玉が抜ける勢いで掻きたい。ウザい、横で楽しそうに話しているこの小娘がウザい。いいよな、お前はアナルが痒くなくて。

この世界には二通りの人間しかいません。アナルが痒くない人間か痒くて死にそうな人間か、それだけなのです。当然後者な僕は

「でさー、この間先生が言うんだけどー」

という彼女の会話にも

「うるさい、ちょっとお前、尻の穴を掻いてくれんか」

って言いそうな勢いでした。それぐらいどうでもいい存在に成り果ててた。まあ、言ったら狂ったと思われるので必死に我慢したけど。

布屋に到着後も、展示してある布全てで尻を拭きたい。そんな衝動が抑えられませんでした。彼女?まだいたの?って感じ。

「オレンジ色なんだけど、サテンと普通のどっちにしよっか?」

なんて二種類の布を手のとって彼女が言うんですけど、普通のヤツの方が良く拭き取れそうだとしか思えず、心ここにあらずといった状態でした。

もう我慢の限界、このままココにいたのでは店の中で尻出して掻いてしまいそうだ。いかにかん、ここにいてはいかん。そう思った僕は隣の不良ショップのトイレに駆け込むのでした。(なんか布ショップのトイレはファンシーすぎて抵抗があった)

不良ショップ内のトイレは、明らかに悪を極めた人々のポスターがイッパイ貼ってあって、すげえガンとか飛ばされてるので尻を出すのを憚ったのですが、とにかくズボンとパンツを脱いでボリボリボリボリ、トイレットペーパーを指先にグルグル巻きにしてボリボリボリボリ。このウンコさえ無くなれば痒みは消える、そんな思いで、火が出そうな勢いで掻き毟りましたよ。

でもな、世の中ってのはそう上手くいかないわ。横着すれば手痛いしっぺ返しが来るようにちゃんとできてる。固まった残骸ってな、ティッシュで拭いたぐらいじゃ取れやしない、むしろ痒みが増す結果になっちゃったんだわ。うん、拭いた紙は微妙に茶色くなるんだけど、もう全然取れねえの。

失意のままトイレを出て、もう布を購入した彼女と合流するんですけど、もう歩けないほどの痒みマックス。歩きながらアナルに指を押し当て、ズボンの上からボリボリと掻いてましたもの。

でな、ここで1つすげえ発見をしたんだけど、皆もチャンスがあったら試してみて欲しいんだけど、ウエットなウンコするじゃん、で、拭かずにパンツとズボンをはく、しばらくすると地獄のような痒みが襲ってくるんだけど、そこでズボンの上から痒い部分を掻いてごらんなさい。で、その指を臭ってごらんなさい。驚くほど臭いから。

いやな、普通に考えてズボンとパンツの二枚重ねやん。大丈夫そうかなーって思うんだけど、ウンコの匂いって偉大なのな。パンツとズボンなんか容易くスルーして指に匂いがついちゃう。ありゃもう貫通弾だよ、貫通弾。匂うだけで死ねる、立ったまま仁王になりかねない悪臭が指に付くから。

そんなこんなで、本当は布を買った後口実をつけて彼女と遊ぼうと企んでたのですが、もう一刻も早く家に帰ってアナルを洗いたかったので、「さ、帰ろうか」とそそくさと電車に乗って帰りました。もちろん、彼女にばれないように指先でアナルを掻きながら。

帰りの車中、彼女が「買った布、大きさ大丈夫かな?ちょっと広げてみよ。pato君、はじっこ持ってて」とか、スロット屋にいるガキ以上にウザいこといいだしやがりまして、ウンコ臭が大量にこびりついた指で布を持っていたのですが、明らかに異臭が漂ってました。

最初は笑顔で布の大きさを測っていた彼女でしたが、次第にその異臭に気がつき、終いにゃ道端で犬のウンコ踏んだ時みたいな顔してました。その表情を見た瞬間思いましたね、ああ、この恋終わったな、と。まあ、もう恋とかどうでもよくて、ただただ家に帰ってアナルを洗いたかったんですけど。

このように、日常の中では最高級に大切であろう色恋沙汰も、そのクライマックスであるデートすらも、アナルの痒みごときで簡単に崩壊します。大きな災害や戦争、テロの脅威で僕らの日常は失われます、そして個人の日常はたかだかアナルの痒みで失われ、急速にどうでもいいものになります。「ある日」「ある時」はそこまで来ているのです。ですから僕らは何事もなく日常を送れることを感謝し、ウンコの後は常に尻を拭くことを心がけ・・・

と、まとめっぽいことを長々と書いてオチをつけ、日記を終わりにしようと思ったのですが、さっきオナラをしたら勢い余ってブツが少量出てしまったらしく、のっぴきならない緊急事態が起こりました。もはや僕の日常である日記執筆すらどうでもいいものになりましたので、ココで日記はお終い。急速にまとめ部分を省いて、最後のオチの一文だけ書いておきます。

とりあえず、その年の体育祭、誰にも貰われず余った僕のオレンジ色のハチマキはウンコの後にアナルを拭くのに使おうと思った。

(はーい、それじゃあ今から風呂行って尻を洗ってきます)

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