最狂親父列伝〜寄付編〜

最狂親父列伝
〜寄付編〜

昨日の日記は、もしかしたらこのサイトが職場バレしてるかもしれない、といった内容のものでしたが、僕的には「おら、どうした?見てるんだろ、こいよ、さあこいよ」といったフィーリングで見てるかもしれない同僚に向けての宣戦布告のつもりでした。

で、今日はビクビクしながら出勤したのですけど、同僚どもは拍子抜けするほどそ知らぬ顔でした。なんというか、彼らの人生においてNumeriなんて何ら関係ない、無関係だ、そんなもの知らない、そんな表情をしておりました。僕も僕で精一杯探りをいれようと

「いやー、今日は天気が悪くて、なんかぬめぬめしてるね」

などと話をふってみたのですが、クラスの女の子にシカトされている嫌われ者男子の如く無反応でした。異常に反応されても困るけど、いくらなんでももうちょっと反応があってもいいんじゃないかしら。

でまあ、これらの情報を統合すると、「もしかしたらサイトバレしてないんじゃないか?」といった結論に行き着くわけでして、それにバレていたとしても、「まあいいや、どうせあと一ヶ月で辞めるんだし」という至極建設的な思考が生じるわけでして、とりあえず消去することなく続けてみようと思いました。

というわけで、すっかり安心しきたことですし、いつもどおり張り切って日記いってみましょー。


最狂親父列伝〜寄付編〜

いつもながら思うのだけど、キチガイにはキチガイが似合うと思う。

「目には目を、歯には歯を」なんて言葉があるけど正にその通り。キチガイにはキチガイしかないって本当に思う。やはりキチガイに対抗するにはキチガイしかないし、キチガイにはキチガイがよく似合う。逆を言えば普通の感覚を持っている人とキチガイとでは合わないし、似合いもしない。そういうことなんじゃないかな。

言うまでもなくウチの親父は狂っていて、彼が織り成す奇行に子供の頃から悩まされ続けていました。やはり一般的な思考を持つ僕とキチガイの親父では合うはずもなく似合うはずもなく、いつもいつも、「何でウチの親父はあんなんなんだろう?」と、普通はチンゲが生えたことで悩むような年代に親父のことで悩んでいました。

つい先日のこと、何か腹が減ったので寿司でも食おうと回転寿司屋へ行ったのですが、店に入ろうとすると僕の携帯電話がけたたましく震えました。

着信中 父

携帯電話の液晶表示は親父からの電話であることを容赦なく示していました。コレを見た瞬間、これから食べる寿司に対する楽しみや、ワクワク感などなど、そういった楽しい感情が全て消え失せました。

ハッキリ言って、親父からの電話ってのはロクなことがありません。極度の泥酔状態に陥った親父相手に3時間ぐらい意味不明の説教をかまされたり、いきなり「チンコが取れた!」などと意味不明のセリフを言われたり。親父からの電話なんてのは、できれば僕の日常にあまり存在して欲しくないのです。

できることならこの着信を徹底的に無視し、意気揚々と寿司を、大好物のイクラなどを食べたいのですが、そういうわけにもいきません。出ないなら出ないで鬼のように着信、それでいて説教が待っていますから、確実に出なくてはならないのです。

唇をギュッと噛み締め、ゴクリと生唾を飲み、意を決して通話ボタンを押しました。

「よー!ワシじゃ、ワシ、あのな、フロッピーって誰が発明したんだっけな?」

開口一番これですからね。電話取った瞬簡にこれですからね。明らかに意味が分からない。いきなり「フロッピーは誰が発明した?」なんてクイズをかまされても困るものがあります。

こんな意味不明の電話は早急にたたっきり、楽しい気分で寿司を食べたいところなのですが、ここでふと思うのです。

もしかして、親父はクイズ・ミリオネアに出てるんじゃないかろうか。

いくら親父が狂っているとはいえ、いきなり「フロッピーを発明云々」というのは常軌を逸脱しています。そこで、なるべく理論的に筋道が通るように解釈してみると、やはり「親父はミリオネアに出場中」という結論に至るのです。

意気揚々とミリオネアに出場した親父、明らかに棒読みで「一千万円取るぞー」なんて拳を突き出している出場者に囲まれ、少しばかり緊張の面持ち。なんとか予選を突破し、もんたの前の席に座ります。目指すは一千万円。しかしながら、ここで大きな大誤算が、

Q1 フロッピーを発明したのは誰?

A.ドクター中松 B. ドクター中野
C. ドクターK  D. ドクタードリトル

1問目から分からない親父。そこで早くもライフラインを使うことを決意し、僕に電話をかけてきたのかもしれません。ということは、僕の様子もどこかから隠し撮りされてるかもしれないし、僕の声もオンエアにのることになる。親父も親父で、もんたに「ファイナルアンサー?」とか凄まれているかもしれない。

こりゃあ、ちゃんと答えなきゃな、と考え、少し男前な声で

「ドクター中松だろ」

とクールに答えておきました。ハッキリ言って、この時の僕の声は声優顔負けの良い声だった。

「あ、そうかそうか、ドクター中松だったな。あのケッタイな靴でピョンピョン飛ぶやつだな、わかったわかった」(プツン)

物凄く早い口調でそう言い残すと、無下にも電話は切れてしまいました。広い広い寿司屋の駐車場、受話器片手に呆然と立ち尽くす僕の姿だけが残されていました。

後から聞いた話なのですが、この時の親父の電話はミリオネアでもなんでもなくて、ただ単に高校時代の友人と酒を飲んでいたら、「誰がフロッピーを発明したか?」という議題になり、意見の分かれた親父と友人が掴み合いの喧嘩になりかけたことが原因だと聞きました。

ドクター中松で殴り合いの喧嘩になりそうなほど一触即発の雰囲気になる親父も親父ですが、それを実の息子に電話で聞くという行為も信じられない。しかも、親父の友人は「ドクター中松」って主張していたのに、親父は「キュリー夫人」って言ってたらしいですからね。フロッピーを発明したのがキュリー夫人て、明らかに狂っている。

このように、キチガイ親父に振り回され、正常な精神構造をしている一般人の僕は困り果ててしまうことが多々あるのです。やはりキチガイにはキチガイしか馴染めない。キチガイと一般人には永遠の隔たりがあるとしか思えないのです。

またまた先日の話です。もう夜とも呼べるような遅い時間帯にアパートでテレビを観賞し、絶え間ないほどゆっくりとしたプライベートな時間を過ごしていた時の出来事です。またもや、その静寂を破るかのように携帯電話がけたたましく震えたのです。

着信中 父

またもや地獄の表示。キチガイからの着信。ここから安らげる僕のプライベートな時間を奪うかのごとき着信表示。恐る恐る出ましたよ。

「よー、ワシだワシ、また聞きたいことがあるんだけどな」

またもやアッケラカンと言う親父、なんか「また聞きたいことがある」とか言うてはります。

「なんだよ、今度はCDを発明した人でも聞きたいのか?」

と言おうとしたその瞬間でした。

ピンポーン!

玄関のチャイムが元気良く鳴り響き、こんな夜分に来客が来訪したことを告げてくれました。

「お、なんか客が来た、ちょっと待ってて」

電話の向こうの親父にそう告げ、携帯電話を置いて玄関へと走りました。

「こんにちは、夜分にすいません。実は我々は○○会という団体なのですが、現在このような催しを計画しているのです。催しを行う際に必要な寄付を募って周っているのですが・・・」

なんか、意味不明な怪しげな団体でした。なんか3人組の青年の集団だったのですが、全員が見事なまでに覇気のない顔をして、何故だか知らないけどメガネを標準装備していました。なんていうか、間違いなく学生時代は「ハカセ」とか「がり勉」とかのニックネームがついていたであろう集団でした。

で、怪しげなパンフレットを見せられ、「○○フェスティバル」と銘打たれた催しが開催間近であると熱弁していました。パンフレットにはすっげえチープな輪投げとかお遊戯とかやってる写真が掲載されていました。

「いや、あの・・・そういう寄付とかはやらないことにしてますので・・・今お金ないですし・・・」

と無下に断ると、青年は覇気がない顔してやがるくせに急に元気になって、

「お願いします!一口5000円ですから!お願いします!」

と、僕のチンポでもしゃぶりかねない勢いで懇願してきました。けれども、いくら僕とはいえ見ず知らずの団体に、しかも生娘ならともかくこのような野暮ったい青年集団に5000円も払うほど裕福ではありませんので

「いやいや、勘弁してください。それに今電話中なんですよ」

と冷たくドアを閉めようとしました。けれども、その青年集団は諦めず

「○○フェスティバルでは楽しいダンスなど、これはハッピーダンスって言うんですけど、ダンスをはじめ様々な催しがあるんです!きっと楽しいですよ!」

とか言いながら、三人がかりでそのハッピーダンスとやらを踊りだすのです。覇気のないハカセ三人組が!ウチの玄関先で!怪しげなダンスを!

壊れたマリオネットみたいになりながら、右へ左へと「ハッピー♪ハッピー♪ハッピーワールド(ワールド)」とか歌う青年たち、おまけに上の段と下の段に別れて微妙にハモってやがります。この三人、明らかにキチガイです。

その光景を見ていた僕は異様に頭が痛くなってきて、冷たくドアを閉める、もしくは5000円をあげてとっとと帰ってもらう、などの選択肢を思いついたのですが、ここで天才的な妙案を思いついたのです。

目には目を、キチガイにはキチガイじゃないか。

幸い、居間にある携帯電話ではキチガイ親父が僕が客をさばいて帰ってくるのを今や遅しと待ち構えています。そして、玄関先にはキチガイ三人がこれまたマサイ族みたいに踊ってます。

このキチガイ三人にキチガイ親父をぶつければいいんじゃないか。そうすればキチガイで同士で適当に潰しあってくれ、少なくとも一般人である僕には危害を加えない。きっとそうに違いない。

「じゃあですね、僕の財政面を担ってるウチの親父を説得してくださいよ、そしたら寄付しますから」

そう言って居間まで携帯電話をとりにいった僕。電話口の親父には、

「なあ、何か聞きたいことあるみたいだけど、今から詳しい人に代わるから、その人に聞いてよ」

と告げました。親父も親父で何にも疑問に思わず、「よっしゃ!」と意味不明に自分だけで盛り上がってました。

で、寄付を募りに来た青年に携帯電話を渡し、親父と会話してもらうことに。きっとこれで親父がこの青年どもをキチガイっぽく追い払ってくれるに違いありません。キチガイにはキチガイを、たまにはキチガイも役に立つじゃないか、などとその光景を見守っていました。

最初こそは親父のキチガイトークが功を奏したのか、青年もシドロモドロに喋っていたのですが、次第に雲行きが怪しくなっていったのです。

「え、ええ、そうなんです。ハッピーダンスがですね」

「ハッピー♪ハッピー♪ハッピーワールド(ワールド)って歌なんですよ」

「ありがとうございます、気に入っていただけましたか」

「そうなんです!これは皆が幸せになるためのダンスで、我が会の代表が考案した・・・」

「そうですね、いつか一緒に踊りたいですね」

電話ですから、親父が何を喋っているか分からず、青年の会話しか分からないのですが、何やら親父と青年がキチガイ同士で微妙に意気投合しているのが分かりました。おまけに、

「え?フロッピーディスクですか!?」

「たしか・・・ドクター中松が発明したんじゃ・・・」

「な、ドクター中松だよな」(受話器を手で塞ぎ、仲間に確認を取る青年)

「そうそう、あのジャンピングシューズで飛ぶ、よく選挙に出てくる、ええ」

ウチの親父、なんか「また聞きたいことがある」って、またもやドクター中松のことだったみたいです。何がそこまで彼を中松に駆り立てるのか、それ以前に前も教えたやんか。

「お父さんが代わって欲しいそうです」

キチガイ親父との会話を終えたキチガイ青年は、得意気な顔で僕に携帯電話を差し出してきました。で、僕が電話に出ると、親父は開口一番に

「いやー、そうだそうだ、ドクター中松だったわ。いやー、いい人たちだなー、おまけにハッピーダンスとやらも気に入ったし、おい、オマエ、ケチケチしてないで2口くらい寄付してやれよ」(ガチャ)

キチガイ同士で意気投合して途方も無いことを口走ってました。しかも言うことだけ言って電話をガチャ切り。おいおい、話が違うじゃねえか。

結局、親父に逆らうと後が怖いですし、親父を説得できたら寄付するといった約束もあります、言われたとおり財布からなけなしの一万円札を出して2口寄付しておきました。

「ありがとうございます。ハッピー♪ハッピー♪ハッピーワールド(ワールド)」

喜びの儀式らしく、またもやけったいな歌とダンスを披露してくれた三人組は、本当にキチガイとしか思えないような動きのまま闇夜へと消えていきました。

誰もいなくなった玄関先に、空になった財布と携帯電話を握り締めて呆然と立ち尽くす僕。そこで思ったのです。

確かにキチガイにはキチガイをあてがうのが一番だ。けれども、キチガイ同士は良く混ざり合い、意気投合しやすいもの。そうなった場合、ツインカムキチガイのしわ寄せは何倍にもなって回りの一般人に降り注ぐのだと。

キチガイとキチガイ、二つの極星を交わらせるのは危険すぎる。キチガイに刃物だ。それより1万円も払ってしまってどうする。「ハッピーハッピー」って微妙にいい曲かも。やっぱウチの親父は狂ってる。それにしても今日は冷えるな。

などと悶々と考えていたら、あらゆることがどうでもよくなってきて、ドクター中松のジャンピングシューズでもはいて夜空に駆け出したい気持ちになりました。

もっかい言う、間違いない、ウチの親父は狂っている。

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