13番目の客

13番目の客

そういえば、この間の「セーターに関するアンケート」にご協力してくださった皆様、ありがとうございました。

こんな変質的クレイジーサイトのトップページで普通にセーターに関するアンケートを収集している時点で何箇所かは大幅に間違っているのですが、それでも予想を遥かに上回る数の回答が得られ、大変ありがたく思っております。

回答していただいた方は分かると思いますが、あれはセーターの購入に関するマーケティングだとか市場調査みたいな感じのものなのでして、本当に真面目な普通のアンケートだったのですよね。

最初は、そういった普通のアンケートに対する回答を、こんな変態サイトのトップページで呼びかけるのもいかがなものかと思ったのです。それこそ、変にウケを狙った回答が多発し、データーとして何ら信憑性のない結果が得られるのではないかと心配したのです。

しかしながら、どうやら皆さんすごく真面目に回答していただけたみたいで、特にこれと言ったハイパボリックな回答もなく、セーターの購入や嗜好に関する重要なデーターが取れたのではないかなと思うわけなんです。ヌメラーもなかなかやるじゃないってなもんですよ。

でまあ、得られた回答データーをアンケート依頼主さんに渡す前にズラッと眺め、チョロチョロとデーター整理などをしていたのですよね。で、皆さんの回答を一個づつ眺めていたんです。

「みんなちゃんと回答してくれてるなぁ、なんとも嬉しい限りだ」

とか思いながらデーターを眺めていますと、たった一つだけ、有り得ないほど異彩を放ち、僕の心を鷲掴みにして離さない回答があったのです。

それは「今までセーターを購入されて、何か困った事がありましたか?」という質問での回答だったのですが、セーターを購入してどのようなことで困ったのか?といった質問だったのですよね。

で、皆さん至極普通に答えてくださってて、「チクチクする」とか「毛玉ができやすくて困った」などなど、セーターを購入して困った経験を記入してくださったのですよね。「洗濯すると縮む」とか「虫食いなどが起きやすい」とか、本当にそういうので困ったんだろーなー、ってのがありありと分かる回答がてんこ盛りだったのです。

で、その中で一際異彩を放つ回答が1つ。みんな、「洗ったら縮んだ」とか「チクチクする」だとか、設問どおりセーターに関する困ったことを回答している中で1つだけファンキーな回答が。

「マッチョがセーターを着るとキモいと言われた」

いや、それはアナタの事情ですやん。

確かにそういうこと言われると悲しいし、ちょっと凹むんですけど、それってあんまりアレじゃないですか。上手く言えないけど、なんかちょっと違うじゃないですか。

だってさ、みんなセーターに関する困ったことを答えてるわけじゃない、チクチクとか縮むとか、それなのに「マッチョが着るとキモいと言われた」ですからね。自分の悲しいメモリーをカミングアウトしてどうするってなもんですよ。確かに困ったことだけどさ。

それにね、マッチョがセーター着てもいいじゃないですか。ムキムキのマッチョマンがファニーなセーターを着る、それでも別にいいじゃないですか。キモいってこともないですし、むしろ誇らしくするべきなんだと思うんですよね。

鍛え抜かれた肉体、そしてセーター、縫い目が織り成すセーターの膨らみはその下に鋼のボディが潜んでいることを暗に知らせている。いいじゃない、こういうのいいじゃない。間違いないよ、別にマッチョがセーター着てもキモくないって。

とにかく、このようなファンキーな回答もありましたが、全体的に有意義なデーターが取れたと思います。依頼主様はセーターのマーケティングに関する重要なデーターも得られましたし、僕自身としても「マッチョがセーター着てもキモくない」という貴重な知見が得られました。

アンケート依頼主様も回答してくださった407名の方に感謝しておりますので、僕からもお礼をいいたいと思います。また何かありましたら協力してやってくださいね。

で、全然関係ないですけど、マッチョで思い出したので先日散髪をしに理髪店に行った時のお話しでも書こうかと思います。

ついこの間の話なんですけど、髪の毛が末期的に伸び放題で落ち武者みたいになってたものですから散髪に行ったのですよね。いつも行きつけの散髪屋に、休みの日を利用して行ったのです。

普通、理髪店とか言うと美容院とは違いますから、白衣を着たマスターがいて、バリカンでバリバリやるようなのを想像しがちなんですけど、僕が通ってる理髪店は違うんですよね。

理髪店なのに妙にオシャレというかなんというか、どちらかといえば美容院なんかに近いタイプなんですよ。髪を切るスタッフもHIP-HOP系で何人かいて、店内にはラップみたいな音楽が鳴り響いている、そんな店なんです。

で、そんなオシャレな理髪店に僕のような野武士が行っていいはずはなくて、僕のようなカスはそれこそもっと野暮ったい店とかに行くべきなんですけど、そこはやっぱりそれなりの理由があるのですよね。

あの、この店はDJ崩れみたいな理容師が何人かいるんですけど、それに伴って若い生娘がサポートみたいなことをやってるんですよね。おそらく理容師か美容師になることを目指す生娘なんですけど、そんな生娘がすごく献身的に世話してくれるの。

髪切る前の洗髪なんかその生娘がやってくれるんですよ。生娘がそのか細い白い指で僕のようなカスの頭髪を洗ってくれるんですよ。しかも、散髪後の洗髪もやってくれるし、その後には頭部や肩の辺りのマッサージを軽くやってくれるんです。

いやな、普通に生活してたらさ、僕のようなカスで足の臭い男が女の子に洗髪してもらうことってないじゃないですか。マッサージとか有り得ないじゃないですか。だってさ、洗髪してもらうっていったらおセックスするのとほぼ同義だぜ。3000円ちょっとの散髪代を払うだけで若い美容師見習いと擬似おセックスを体験できる、それなら髪が伸びるたびに通うってもんじゃない。

でまあ、いつものごとくですね、若い生娘による洗髪、いや擬似おセックスを体感するためにですね、ルンルン気分で散髪屋に行ったわけなんですわ。

「現在混んでますので少々お待ちください」

受付を済ませると、日曜日の昼間ということもあってでしょうか、満員御礼なのでしばし待てという通達。もう股間を怒張させながら待合室で待ちましたよ。

右へ左へと忙しそうに動く数人の美容師見習いの生娘を眺めながら、「ああ、あの子に洗ってもらいたいかも」「いやいや、あの気の強そうな子に洗ってもうのも捨てがたい」「うーん、この店は指名とかできないのか」などと悶々と身悶えるほどに考えていましたところ、目の前に途方も無いクリーチャーが飛び込んできたのでした。

いやな、すげえマッチョ。すげえマッチョな美容師見習い。もちろん男。全然生娘じゃない。

なんかね、生き死にの懸かった修羅場を5回くらいくぐり抜けていそうな顔をしてですね、ボディビルでもやってるのかと思うほどすっげえマッチョでスキンヘッドの青年が、白いタオルを持ってこれまた忙しそうに右往左往してるのですよ。

女性だらけのファニーな散髪屋の中にあって一際異彩を放つマッチョ見習い。おまけに最近入ったばかりらしく、微妙に右往左往している。逆三角形の素晴らしいマッチョ体型をしているのに、これでもかというほどマゴマゴと見習い作業をこなしている。

うわー、せっかく生娘に洗髪して欲しくてこの店に来たのに、こんなマッチョに洗髪されたら嫌だなー、力の加減が分からずに頭皮とか剥がれるんじゃないのかなー、いやーアイツだけは当たって欲しくないな、できれば生娘がいいなー。と思っておりました。

「お待たせしました、こちらにどうぞ」

と案内に促され、トコトコと散髪用の椅子のところに歩いていきましたところ、椅子の横では先ほどのマッチョがタオルを持って満面の笑みで、これ以上はないかという笑顔で微笑んでおりました。うん、笑顔までもある意味マッチョだった。

マッチョが当たったらいやだなー、生娘がいいなーって思っていたら予定調和の如くマッチョが当たる。そんな自分の運命を呪いつつ、それでいて美味しいかもと思いつつ苦笑いをしていると

「失礼しまーす」

と、マッチョがなんかテルテル坊主みたいになるやつをつけてくるではありませんか。で首の部分でソレを止めようとするんですけど、これがまた有り得ないパワーなのな。首が絞まるとか息が苦しいとか、そういうのを超越してて、首が千切れ取れるかと思ったわ。鵜の気持ちがちょっと分かった。

でまあ、そこからドコドコと滑車付きの洗面台みたいなのが運ばれてきまして、椅子を後ろに倒され、マッチョの手によるマッチョ洗髪が始まったわけなんですけど、これがまた凄いのな。

マジで頭皮がはがれるとかそういうのを超越してて、脳みそを掻き出そうとしているレベルなの。あまりに力強くパワフルに、それでいてソウルフルに洗髪してくるもんだから、すっげえ頭皮が痛かった。

「痒いところないですかー?」

っていう問いかけに対しても、普段の生娘見習いなら「下半身が痒いです」とか言いたくてウズウズするんですけど、もう、このマッチョに対しては「痒いというより痛いです」と言う他なかったね。

「ちょっと失礼しますね」

そのうち、僕の後頭部を洗おうとしたマッチョ見習い、後ろ向きに寝転んでいる僕の後頭部を洗うのですから、ちょっと頭を持ち上げようとしたんですよね、で、ヒョイと持ち上げたのですけど

グキグキグキグキ

ありえない角度に首曲げられるのな。その有り余る かいな力でとにかく首を持ち上げる。ホント、死ぬほど痛くて、首から上がねじ切れるかと思ったわ。その後も側頭部とか洗ってくれるんだけど、その度に僕の首はメリバキいってましたからね。

でまあ、地獄の洗髪も終わり、やっとこさDJ崩れみたいな理容師が出てきて散髪が始まったのですけど、もう心ここにあらず。死ぬほど首がズキズキするわ、散髪が終わったらもう一度地獄の洗髪があるわ・それよりなにより、散髪後のマッサージが怖すぎる。下手したら体がバラバラになっちゃうんじゃないだろうか。

とか、恐怖に震えていたら普通に散髪が終わり、またもやマッチョの手による地獄の洗髪タイム。痛めた首をさらに痛めつけられる結果となりました。間違いない、ヤツは力の加減ってものを知らない。

そんなこんなで、地獄の洗髪も終わり、文字通り僕の首は皮一枚で繋がっている状態だったのですが、そこで髪を乾かしたらマッサージタイムに突入。コリをほぐすというよりは、明らかに素手で人体を破壊する実験を受けているような状態になっていた僕は、髪が短くなって爽やかさがアップしたことより、生娘見習いに洗髪してもらえなかった残念さより、ただただ生きて帰りたい、無事に帰りたいと熱望するだけでした。

「ありがとうございました」

散髪料金を払い、痛む首を押さえながら店を後にしようとしたのですが、入り口のところでマッチョ見習いが深々と頭を下げていました。

コイツさえいなければ生娘に洗髪してもらえたのに。コイツさえ力の加減を知っていればここまで首が痛まなくて済んだのに。コイツさえ、コイツさえ・・・・。

なんだか段々と彼のことが憎くなってきたのです。そして、彼が着ていたクリーム色のセーターを見て思いましたよ。

「マッチョがセーターを着るとキモい」

普段はそんなこと思わないのですが、マッチョの手によって酷い目にあったのでそう思ったのです。僕もその日はセーターを着ていましたが、首がチクチクするというよりはズキズキしていました。もうこの散髪屋には二度と行かない。

そうそう、散髪したら髪型が金正日みたいになったわ。

関連タグ:

2004年 TOP inserted by FC2 system