決戦はクリスマス
〜忘年会編〜
年も明けてしまい、クリスマスの時の話とかするのは限りなく旬を逃しているのですが、それでも忘年会話です。クリスマス前日であるクリスマスイブに泥酔ラジオを行った僕。翌日に大切なプレゼンを控えているにも関わらず、全てを忘れて大泥酔。終いにはラジオリスナーに「おい、誰かヤツを止めてやった方がいいんじゃなか」などと心配される始末でした。
その放送を終えてから30分ほど寝た僕は、這うようにして、むしろ這って職場へと赴き、プレゼンの準備および発表練習をするのでした。
プレゼン自体は、前日の深酒、睡眠不足が祟ったのか、妙にフラフラでシャックリが止まらなかったのですが、それでもなんとか及第点レベルで終えることができ、なんとかクビにならずと済んだとホッと胸を撫で下ろすのでした。
「おつかれさまpatoさん、よかったですよ」
労ってくれる同僚たちの声、拍手がオフィスに響き渡り、そうこうするうちに同僚たちは机の配置を変え始めたのでした。そう、B子プロデュースの手作り忘年会の始まりです。
何かとハンドメイドが重宝される不景気な昨今、忘年会においてもそのハンドメイド思考を導入しようと、高い金を払って店とかに行かず、オフィスで手作りの忘年会をすればいいじゃない、と幹事であるB子が言い出したのでした。
同僚のそれぞれはB子の命によって指定された物品を購入して持ち寄っていました。詳しくは12月14日付の「手作り忘年会」の過去日記を読んでいただけると分かると思うのですが、おつまみや酒などなど、指定された物品を素直に持ち寄っておりました。
皆が酒とかツマミとか、比較的リーズナブルな物品を指定される中、ただ一人「寿司」とだけ高級品を指定されたY君も、素直に人数分の寿司を買ってきていました。まあ、普通の寿司を人数分用意しては明らかに破産しますので、やけに魚介類が少なく、タマゴとかキュウリがぶっ刺さった物が大半でしたが、それでも寿司は寿司でした。
僕はといいますと、指定された購入物品は紙コップとか割り箸とか、寿司に比べるとカスとしか言いようのない物品だったのですけど、それでも「出し物(とにかく笑えるの)」とか意味不明のものを要求されていたのでした。
おまけに、これはB子の命令ではないですけど、何者かの悪戯によって「コンドーム」を買って来いという命令もあったのです。悪戯だと分かっている僕でございましたが、そこはやっぱりクレイジー僕、しっかりとビッグサイズのコンドームを購入しており、プレゼンの最中から密かに懐に忍ばせているのでした。
「かんぱーい!今年もおつかれさま!」
机の配置や、皆が買ってきた料理や酒の準備も整い、いよいよ手作り忘年会の幕が開きました。なんか上司が偉そうに挨拶をしやがりまして、その後幹事であるB子の「今年の忘年会のテーマは手作りです」とか訳の分からない宣言があり、乾杯。皆で缶ビールで酒を注ぎながら乾杯となったのです。
「いやあおつかれさま」
「今年最後に大仕事でしたね、おつかれさま」
後輩やら何やらが僕の場所にやってきて酒を注いでくれるのですが、なんか次から次へと際限なくやってくるのですよね。僕を慕ってくれて、労いの言葉をかけながらついでくれるのはありがたいのですけど、なんていうか、そんなに飲めるはずないじゃないですか。
前日からほとんど寝ずにプレゼンに備えていた。おまけに、その夜にはラジオをまともにできないぐらい泥酔。体が疲れているのか、酒がまだ残っているのか知りませんけど、とにかくそんなに飲めるはずないじゃないですか。
案の定、一杯目のビールでものすごく酒が回ってしまい、前日の泥酔ラジオの悪夢再びといった状態に。それでも次から次へと酒を注ぎにやってくる後輩たち。もはやこういった罰ゲームなんじゃねえかと思うほどの状態でした。
僕は普段から職場での飲み会では酒を飲まないように心がけております。もともとそんなに飲めないですからアレなんですけど、それ以上に酔ったときの言動がヤバすぎるので、あんま飲まないように心がけておるのです。職場での飲み会で泥酔しようものなら、上司に向かってカツラの調子はいかがですか?とか言いかねない、恐ろしや恐ろしや。
僕がもう泥酔状態でベロンベロンになっておりましたところ、そこにB子のヤロウがやってきやがりまして、
「おつかれさま、patoさん、げふうぅぅぅぅ」
とか、どうやら彼女も忘年会の成功に幹事として良い気分らしく、ベロンベロンに酔っ払って、労いの言葉と共にウミガメの産卵みたいなゲップをかましてくれました。さすが女性とは思えない筋肉を誇るB子、ゲップも女性とは思えず、その勢いで僕の前髪が揺れるかと思いました。
さてさて、宴もたけなわ、そろそろみんなも酔いレベルが高まってきており、盛り上がってきたクライマックス状態になってまいりました。ここでついに出し物の時間がやってきます。
B子から配布された「忘年会に準備する物品リスト」の中で、「出し物」などという物品ですらないものを要求された新人たち、彼らの出し物披露タイムがやってきたのです。なぜか新人ではない僕まで披露することになってましたが。
そんなこんなで、まずは一人目の新人君。彼は手品をやれとB子直々に指定されておりました。そんなこんなで、どこで仕入れてきたネタか知りませんけどトランプを出してすっげえやる気ない感じで手品を披露していました。
「はい、あなたが選んだのはこのカードですね」
と、ALIVEのプロモの時のSPEEDみたいにしてマジックを披露する彼。僕は未だかつてここまでやる気のない手品を見たことがない。こんなマジック、やまだかつてない。そう思わせてくれました。
次に登場するはいつも寡黙な新人君。彼は宴会とか出し物とかとは縁遠いキャラなのですが、それでもB子の命令には逆らえません。なんとか苦手な出し物を克服しようと彼が考えたのは
「トリビア」
なんだか知らないですけど、前に出て彼が調べてきた雑学みたいなのを淡々と読み上げてました。なんか世界一高い山がどうのこうの言ってたけど、よく分からんかった。でまあ、あまりに反応がないものだから、彼は自分で言っといて自分で寂しそうに「へぇへぇ」とか言ってた。その姿に哀れみの涙を禁じ得なかったね、俺は。
そして最後に登場する新人は、B子から「モノマネをやれ」と命令された彼。僕のようにモノマネのスペシャリストならばいいのですが、あまりモノマネを嗜まない人にとっては拷問としか思えない命令。
でまあ、困りに困った彼が何をやったのかと言いますと、
「B子さんのマネをします!」
とか、神をも恐れぬことを言い出しやがりまして。
「ウホー!patoさん!書類できたんですかっ!」
とか、ゴリラのような、それでいてB子っぽい動きで言ってました。
こいつ、困りに困ってタブーに手をつけやがった。これだから若いってのは恐ろしい。
いやいや、確かにB子のマネとか、アイツはアクが強いキャラですから手っ取りばやいと思いますよ。それでいて笑いも取りやすいし。でもね、本人の見てる前でそんなゴリラにデフォルメしたモノマネとかやりすぎ。おもしれえけど危ないじゃないの。本人にバレたらどうすんだ。
とか思ったのですけど、当のB子は酔っ払っていてひどく上機嫌らしく
「やだーおもしろーい、誰のモノマネ?!」
とか、実際には自分がマネされているとは思わなかったみたいです。僕は「見紛う事なきオマエのモノマネだよ!」というツッコミをグッと飲み込むのでした。
そんなこんなで、命知らずな若者の捨て身のモノマネが終わったあとは、いよいよ僕の出番。僕は当初の予定どおり最初に「コンドームを用意すること」と悪戯で書かれた物品リストを出すと
「僕のリストには、ほら、コンドームって書かれていたのですよ」
ここで懐からビックサイズのコンドームを取り出し、「これがホントの手作り忘年会、いけね!これじゃあ子作り忘年会だ!」と、モノマネをした新人以上に捨て身の、セクハラ半歩手前のネタを披露するつもりだったのです。
で、懐からコンドームを取り出し、
「これがホントの手作り・・・「いやー今年は忙しかったなぁ!」
全く、誰も、聞いてねえ。
ということで、お約束のごとく、僕の捨て身のコンドームネタはスルーされたのでした。やる気のないマジックよりも、自分でへぇというトリビアよりも、B子のモノマネよりも何よりも、僕のコンドームネタが一番悲惨だった。だって誰も聞いてないのだもの。
でまあ、差し出したコンドームの箱が妙に寂しく、それでいて行き場もなく、仕方ないので開き直ってコンドーム膨らませて遊んでました。皆が今年の総決算!みたいな状態でワイワイと話をしている片隅で、ただただコンドームを膨らませていました。
「でもさあ、patoさんって2月で辞めるんだよな。寂しくなるなぁ」
そんな僕を尻目に、なぜだか話題は僕のことに。お前らはそんなに俺のことが好きなのか。
「なあ、俺なんかエロい話する人いなくなるよ」
「寂しくなるなぁ」
とか、僕は2月で今の職場を辞めることになっており、そのことをみんな知ってるためにそんな話になったのです。
「patoはいい加減そうに見えてけっこう頑張り屋、お前らのミスとか知らないところで直してるのもちゃんと知ってる。来年からは戦力ダウンするなあ」
普段は僕のことを微塵も褒めない上司すら、酒に酔ってるのでしょうか、僕のことを褒めてシンミリムードになってました。
「patoさんがいなくなると・・・わたし・・・寂しくて・・・」
B子も酔っ払ってるのでしょうか、化粧が剥げて地球外生命体みたいになりながら泣いておりました。いいからいいから、醜いから泣くなって。
僕はこういったシンミリムードが大嫌いで、上司がおセンチになってたり、みんなが寂しがったり、B子が泣いたりとか、そういうのすっごく嫌なんですけど、それ以上に嫌なのが
そんなシリアスな話題なのに、当の本人は右手に膨らんだコンドームを持ってるということ。
もう、これが有り得ない。右手に持った膨らんだコンドームがさっきの出し物の時以上に行き場を失っていたものな。さすがにこの場面でプシューとか空気抜くわけにもいかんし・・・。
ということで、一年の総決算である忘年会、なぜか僕は空気読めない人みたいにコンドーム右手にやり場のない思いを、バツの悪い思いをするのでした。うん、まあ、なんか僕の2003年を象徴してるかのようだ。
みんな手作り忘年会を気に入ったらしく、さらにB子も調子ぶっこきやがりまして、
「こういうのも良いな。新年会もこれでいこう」
とか言ってやがりました。うん、じゃあ新年会に向けてまたコンドーム買ってこなきゃな。
そんなこんなで、新年会でこそはコンドームを活かした出し物を見せ付けたい。それが2004年の抱負だ!とまたもや膨らんだコンドーム右手に決意を燃やす僕の姿があったのでした。