101回目のプロポーズ
プロポーズ。
男性から女性へ、時には女性から男性へ結婚を申し込む一世一代の大勝負。間違いなく男女が織り成す恋愛ドラマのクライマックスと言っても過言ではない。
結婚は人生の墓場だ、なんていう人もいるけど、それでもやっぱり結婚ってのは重大だし、人生ドラマのメインイベント。その地位は揺ぎ無いものと思われる。愛し合う2人が苦労を分け合い、喜びを共有し、時に笑い、時に泣き、そして一緒に暮らす。それがどんなに大切なことか。
そして、それを申し込む「プロポーズ」。もはや尋常じゃないレベルで重要なのは火を見るより明らか。まさに人生のクライマックス。まさに祭の最高潮。
そんなこんなで、世の中には夫婦の数だけ、いやいや失敗したのも含めますとそれ以上の数の「プロポーズ」が存在するわけなのですが、様々なプロポーズシチュエーションがあるものです。
「結婚してくれ」
「君の作った味噌汁を毎朝飲みたい」
「俺のパンツを洗ってくれ」
「君と僕の子供が見たい」
なんてものは序の口序の口。全然スタンダードなレベルだと思います。中にはもっとドラマティックに演出する人もいるものなのです。
まあ、日本において最も有名でドラマティックなプロポーズといえば、ドラマ「101回目のプロポーズ」で武田鉄也がみせたプロポーズになるかと思います。色々と異論はあるかとは思いますが、間違いなく101回目のプロポーズこそが日本一有名でドラマティックなプロポーズ。
走り来るトラックの前にやおら飛び出し、両手を広げてバッチ来い。急ブレーキを踏むトラック。鉄也の寸前、本当に鼻の先辺りでギリギリとまるトラック。
「僕は死にましぇん、アナタが好きだから!僕は死にましぇん!」
ボロボロと泣き出す鉄也。そして、温子の心も動く。そしてバックにはCHAGE&ASUKAの「SAY YES」が。
とまあ、このプロポーズがロマンティックなプロポーズの代表格になっているわけなんですが、よくよく考えるとこれは可笑しい。ちゃんちゃらおかしい。ヘソで茶が沸くわ。
あのな、どう考えてもトラックの前に飛び出すなんてのは狂気の沙汰としか思えないし、トラックが停まれなくて轢き殺されたら完全なピエロじゃないか。もう、なんというか、目も当てられない展開になるかもしれないじゃないか。
やっぱね、こういうのはドラマの世界のことだと思う。こういった奇想天外、明らかに常軌を逸したプロポーズはいただけない。そりゃあ花嫁も裸足で逃げ出すわ。
結局ですね、ドラマの世界のキャラはともかく、僕ら現実世界の住人はもっと常識的なプロポーズを演出する必要があるのではないかと思います。常識的で狂気を感じさせない、それでいてドラマティックなプロポーズ。それが大切なのです。
たとえば、
スキューバーダイビングが趣味のカップル。今日も2人仲良く海へダイビング。
「わあ、やっぱりこの海は綺麗ね」
「うん、海水の透過度が違うよ、透過度が」
ドボン
(海の中なので会話できない)
男、海底に置いてある綺麗な貝殻を指差し、彼女に開けるように指示。
なにかしら?確かに綺麗な貝だけど、珍しくもなんともないじゃない。と不審に思いつつも貝を手に取る彼女。すると、その貝の中には光り輝くダイヤの婚約指輪が。そして貝の裏には「結婚してくれ」という彼からのメッセージ。
このために、ただロマンティックさを演出するためだけに事前に海に潜って策を張り巡らせた彼氏。その苦労を思ってか、彼女の口からは自然と喜びのセリフが零れ落ちる。
「素敵、ゴボゴボ」(海の中なので喋ると大変)
もう、彼女は泣きじゃくっちゃって、水中メガネの中に涙はたまるわ、ボンベから上手く酸素を吸えないわで大騒ぎ。こうしてスキューバーダイビングを通じて知り合った二人は、めでたく海の中で結ばれることになったのでした。
いやいや、ロマンティックな話ですね。なんともロマンティックじゃないですか。トラックの前に飛び出す、って話に比べるとなんとも常識的かつドラマティックではないですか。
他にも、いつもドラマの話とかで盛り上がっていて仲の良いカップルが
「わたし、先週のドラマ見逃しちゃったんだよねー」
「あー、それなら俺、録画したわ、今度貸してやるよ」
「ほんと!?サンキュー」
なんて会話があって、彼女がそのドラマが録画されたビデオ借り、自宅でデッキにセットして見る。すると、普通に見逃したドラマが録画されていたのだけど、最後に彼からのメッセージが。
ドラマが終わった瞬間、ノイズと共に画面が切り替わり、セルフで撮影したと思われる彼の姿が。そしておもむろに
「芳江!アイラブユー!結婚してくれー!」
これには彼女も大感動。なんども繰り返し繰り返し再生してその喜びを噛み締めたようだ。
そんなこんなで、皆さん色々と趣向を凝らしてプロポーズをしているわけなんです。常識的な範囲でドラマティックに、それを命題にみなさんプロポーズしてるわけなんです。
そんな中にあってキチガイとして名を馳せているウチのオヤジですが、気狂いらしく母ちゃんにこんなプロポーズをしたそうです。
ウチのオヤジは無類のキムチ好きなのですよ。三度の飯よりキムチ、むしろ三度の飯がキムチといった勢いなのですが、そんな彼が母さんにこうプロポーズしたそうです。
「キムチ」
これだけですからね。
彼的には、俺のためにキムチを作ってくれだとか、味噌汁を作ってくれというフィーリングで言ったつもりなんでしょうが、いかんせん言葉が少なすぎる。
「最初はなに言ってるのかわからなかったよ」
と、ウチの母は常々言ってましたからね。それに、
「ロマンティックのカケラすらなかった、だってキムチだもん」
と、常々ボヤいてました。
まあ、このようにドラマティック性皆無、ロマンティック性皆無、おまけに意味すら分からない、っていうとんでもねープロポーズもあることはあるのですが、やはりこれは例外。どんなプロポーズにも大体はドラマ性があるってものじゃないでしょうか。
で、そこでポイントとなるのが自分らしさ。前述のスキューバーカップルもそうですし、ドラマカップルもそうです。自分達の交際している状況や、自分達の馴れ初め、そういうのを考慮したプロポーズが一番なのだと思います。スキューバーが趣味のカップルなら海の中で、ドラマの話で盛り上がっているカップルならドラマで。そういうのが素敵ですし、自然に独自性もでるというものです。まあ、キムチプロポーズはダメですが。
ほら、有名な話でこういうのがあるじゃないですか。
どっかの海外のニュースキャスターが番組アシスタントかなんかの娘に惚れちゃって、生放送中にプロポーズしちゃったっていうヤツ。
衝撃映像だとかハプニング集だとかの番組になると必ず出てくるんですけど、こういうのって凄いじゃないですか。
確かに、生放送を使ってプロポーズとか、公私混同も甚だしく、おまけにトラックの前に飛び出すくらい非常識なんですけど、そのカップルらしさがあるじゃないですか。
ニュース番組を一緒にするようになって知り合った二人。そいでもってそのニュース番組中にプロポーズする。それってやっぱり二人の世界を重んじてるってイメージもあるし、2人らしさがあるじゃないですか。これから結婚する2人らしさが。
だからね、ドラマティック性も大切。おまけに、2人らしさも大切。そういうのを満たした上でプロポーズをする。これが最高のプロポーズじゃないかなって思うんです。
ということで、Numeriを通じて知り合ったNumeriのpatoと彼女様。その彼女様にpatoがNumeri日記上でプロポーズ。
「僕と結婚してくれないでしょうか。ずっと一緒にいてくれないでしょうか。なるべく頑張って大切にしたいと思います。」
2人っぽいといえば2人っぽいのだけど、ドラマティック性はあんまりないな・・・。それでもまあ、少なくともオヤジの「キムチ!」よりはマシだと思う