ホワイトデー

ホワイトデー

そういえば、3月14日はホワイトデーでございました。

このホワイトデーというのは大変厄介な代物でございまして、バレンタインデーに貰ったチンゲでチンケなチョコの見返りとして、婦女子に何か品物を贈り返さねばならないようです。

僕はそれこそ非モテでオタッキーで、いつもちょっとオシッコっぽい臭いがすると評判の男ですから、それはそれは暗黒の青春時代でホワイトデートとは全く無縁の生活を過ごしてきました。

バレンタインデーなんてチョコなんか殆ど貰ったことないですし、たまに貰ったとしてもお返ししないから更に貰えない、という暗黒の悪循環。バレンタインチョコのデフレスパイラルといった感じでした。

いやね、バレンタインにチョコ貰っておきながらホワイトデーにお返ししないなんて最悪だよね。間違いなくpatoは抱かれたくない男ナンバーワンだわ。とか世の女性が噂する気持ちも分かります。ええ、分かりますとも。

でもね、僕にだってちゃんとした理由があるのですよ。ホワイトデーにお返ししないに足る正当な理由があるのです。

ほら、ホワイトデーのお菓子とか買うのって恥ずかしいじゃないですか。なんていうか、ああいったホワイトデー商品をどのツラ下げて買ったら良いのかわからんのですよ。

そりゃね、女性に贈るものですから、ファンシーでキューティクルな包みに入ったお菓子とかがホワイトデーの主流商品として売られる気持ちも分かります。いかに女性の心を鷲掴みにするかがポイントですから、そりゃあカワイイ商品ばかりになるのが常と言うものです。

でもね、そんな商品を僕のような野武士が買ってたら変じゃないですか。キティちゃんだかキチガイだか知りませんが、そんなファンシーな商品買えるわけないだろ。エロ本買うより恥ずかしいわ。

しかも買うときなんてまだマシな方なんですよ。いくら恥ずかしい恥ずかしい言ってもレジの人なんて所詮は赤の他人ですし、周りにいる人もまず間違いなく他人なわけですから恥ずかしさなんて一瞬の通り雨ですから。

問題は渡す時ですよ。曲がりなりにもチョコをくれた女性に返すわけですから、かなり人間関係的にも僕と関わりがある人物に渡すわけですよ。そんな勝手知ったる間柄の女性にファンシーなお菓子。なんか「LOVE」とかカワイイフォントで書かれたパッケージのお菓子。

そりゃ、貰った女性も大爆笑だっちゅーねん。僕のような野武士がファンシーお菓子ですよ。どんなツラして買ったんだろう、あの不細工ヤロウがこんなファンシーなお菓子を・・・って想いを馳せて大爆笑確実。

だからね、そんな辱めを受けるくらいなら僕はホワイトデーのお返しをしない。次の年からチョコを貰えなくなろうとも僕は返さない。絶対に返さない。それが僕のホワイトデーにおけるポリシーなのです。

それでまあ、今年のバレンタインデーなんですけど、今年はバレンタインデーから数日遅れたものの彼女から手作りの商品を頂きました。何故か職場の皆に配っていたB子からは僕だけ貰えず終い。

そうなってくるとB子はどうでもいいとして、彼女にはやはりお返しをしないとマズイではないですか。いくら「お返しをしない」ってポリシーでも彼女にお返しをしないってのは恋に仕事にハッスルする社会人としてどうかと思うのです。いや、人としてどうかと思うのです。

ですから、何かお返ししようとは思うのですよ。バレンタインに数日遅れで貰ったものですから、こちらも数日遅れのホワイトデーにしようかと思うのですが、いかんせん何を贈ったら良いのかわからないのです。ファンシーなお菓子なんて死んでも買えませんし、他の商品も何を贈ってよいのか皆目検討もつきません。

でまあ、色々考えた結果、コアな古エロ本屋でピンクローターを購入してプレゼントすることにしました。ホワイトデーにピンクローター、こりゃもうピンクデーだなと言わんばかりのウィットに富んだ贈り物だと思います。

でまあ、彼女の方はピンクローターで解決ということで良いのですが、問題はB子です。いや、B子にはバレンタインデーに貰ってないからお返しもクソもないんですけど、なんかアイツ、勘違いしてやがるんですよ。

時は3月14日ホワイトデー。

いつもと変わらぬ調子で颯爽と職場に出勤すると、B子のヤツが得意気な顔してオフィス内を闊歩してやがりました。

B子のヤツはバレンタインデーに僕を除く同僚全員にチョコを配っていましたから、同僚全員から物凄い数のお返しが貰えると得意満面でした。

現に頭の弱い同僚どもは、朝も早くからヘコヘコとB子にファンシーなお菓子を進呈する体たらくぶり。お前らのようなメガネオタクがどのツラ下げてそんなファンシーすぎるほどにファンシーなお菓子を買ったんだと訪ねたくなるほどでした。

しかも上司(50歳)すらも、なにやらデパートで買ったような高級洋菓子をデレデレとB子に捧げてました。もう見てらんない。

でまあ、僕はB子に貰ってはおりませんから、返す必要もないぞとその光景をマジマジと見つめていたのです。するとなんだか、続々とB子にお菓子を渡しにくる同僚どもが、変な土偶かなんかにお供え物をする原住民のように見えてきたのです。雨乞いかなんかをする原住民(同僚)が、土偶(B子)に一生懸命にお供え物を。

でまあ、B子へのお菓子奉納の儀式も終わりまして、いつもどおりのワーキングタイムの時間がやってまいりました。

ちょうどその日は、僕は別室にこもって作業をすることになっており、なんだか狭苦しい場所で黙々と作業をしていたのです。

すると、

コンコン

なにやらドアをノックする音がするのです。

なんだろう?と思って、作業を一時中断してドアを開けると、そこにはB子の姿が。

いやな、ドアを開けた瞬間にB子みたいなゴーレムが立ってると驚きで死にそうになったり、危うく「チェンジ」とか言いそうになるんだけグッと堪えます。

「何か用?」

とB子に尋ねます。するとB子のヤロウ、とんでもないこと言い出すんですよ。

「わたし、patoさんにホワイトデーのお返し貰ってないんですけど」

とか言うではないですか。いやね、この発言について根本的におかしい点が二つある。

まず、普通はそんなことは言わない。社会生活を営み、人間関係を重んじるなら、貰ってないだとか声を大にして言うものではない。ましてや本人に直接言うとか考えられない。あまりに直球過ぎる。

そして二つ目。お返し云々の前に、僕はバレンタインにB子から貰っていない。貰ってないのに返せとはどういった了見か。

でまあ、あまりにも突拍子のないB子のカミングアウトに驚きを隠せずに狼狽していると

「みなさんは返してくれたのにpatoさんだけですよ」

とか言うではないですか。もうね、そこまで言われちゃ僕もあんまりそういったことは言いたくないのですけど言うしかないじゃないですか。

「いや・・・だってB子さんに貰ってないし・・・」

とか言うと、B子のヤツ修羅のような表情に豹変して怒り出すんですよ

「ちゃんた渡しました!なんで嘘つくんですか!」

いやね、「渡しました」とか断言されても、貰ってないんだからしょうがない。

「いや、マジで貰ってないよ」

とか僕も精一杯反論するんですけど、

「ちゃんと人数分買って配りましたもの、あげてないとかあり得ません。ちゃんとゴディバのチョコを渡しました」

とかキッパリと言い切るんですよ。ゴディバだかゴルバチョフだか知りませんが、僕は絶対に貰ってない。

「ちゃんと渡したんだからお返しくださいね」

とか勝ち誇った顔で言いやがるもんだから、僕も段々とご立腹してきてまいりました。気分的には、そこにある消火器の栓を抜いてB子に向かって発射しながら、「がははははは、これがお返しじゃー」とかやって、白い粉だらけになったB子に向かって「まさにホワイトデーやな」とか言ってやりたい気分。

でもまあ、僕はヘタレでチキンですから、そんなことはできるはずもなく、半泣きになりながら

「そういえば貰ったような気がする。ごめんね、今度の休日にお返しを買ってくるね。もうちょっと待ってね」

とか言ってました。貰ってないのは確かなのにB子の迫力に負けて貰ったと言ってしまう自分。もう自分で自分が情けなくなってくる。なんだ、このヘタレっぷりは。ヘタレのホームラン王じゃねえか。

いやいや、今でこそ不景気でそうではないですが、バブルの頃なんかバレンタインにチョロッとチョコを貰ったお返しが何万円もするブランド物だったりするってのが常識だったではないですか。僕はそれを聞いて「ひどい世の中だな、チョコのお返しがブランド物かよ。男性は大変だな」と思ったものですが、貰っていないのにお返しを要求されるってのはそれ以上に酷いことだなと思うのです。

とにかく、このままではB子が「お返しよこせー!ホワイトホワイト!」とか暴れ狂いそうな勢いですので、貰ってもいないのに何か買ってお返ししようかと思います。

ただ、やっぱりファンシーなお菓子とかは野武士である僕には購入できませんので、B子にもピンクローターを買ってプレゼントしようかと思います。

3月14日はホワイトデーではなくピンクデー。そう開き直ってプレゼントしてやろうかと思います。

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