モー娘。の絆を超えて

モー娘。の絆を超えて

一年ぐらい前の話になるのですが、ワタクシは非常に非常識な若者でありました。最近では歳を重ねることによって丸くなってきて紳士的マナーを身につけてきて、「俺も昔はワルだったぜ」などと昔を懐かしんだりします。

その非常識な若者であった1年前。ワタクシはバスに乗っておりました。バスはとても混んでいて、立っている人こそいませんでしたが、ほぼ満席状態でした。マナー知らずな僕は周りの人など気にせず、買ったばかりのMP3プレーヤーでガンガン音楽を聴いていました。あ、もちろんヘッドホンはしてますよ。でもあまりに大音量で確実に音が漏れていたんです。

聴いてた音楽はモーニング娘。の「I WISH」でした。もう完全にノリノリな僕はモー娘。の世界に入り込んでました。 しばらくバスが走り、そろそろ目的地に到着というときに、突然、俺の後ろに座っていたオッサンが

「おい!兄ちゃん!」

と話し掛けてきました。大音量の音楽で聞こえない僕。痺れをきらしたオッサンは僕の肩を叩きます。そこでやっと気がついた僕は、後ろを振り返って愕然としました。

パンチパーマに色メガネ。首筋には金のネックレスがチラホラと やばい・・・怖いオッサンだ。とても堅気の人には見えない。やっぱりガンガンのボリュームで聴いていたのがオッサンの気に障ったのだろうか、 殺されるかも・・・。 お父さんお母さん、今まで育ててくれてありがとう・・・・。

僕は既に死をも覚悟しました。どうせ殺されるならせめて苦しくないように殺して欲しい・・・。などと思いながら、

「はい、なんでしょう・・・?」

と恐る恐るヘッドホンを外しながら受け答えしました。

オッサンは色メガネを外しながら、俺を睨みつけ、菅原文太っぽい感じで

「兄ちゃんは・・・モーニング娘。・・・好きなのかい?」

オッサンの意外な発言に僕なんかは魂が半分ぐらい抜け出ちゃったようなカンジでした。まさか、こんなコワモテのオッサンの口から「モーニング娘。」なんて単語が飛び出すとは思いませんでしたから、不意を突かれた僕は

「へ!?・・・す・・す・・好きです」

などと返答しちゃったりなんかして、イキナリ「好きです」なんて、なんかオッサンに愛の告白してるみたいじゃないですか。で、オッサン、僕の返答を受けて

「ほぅ・・・誰が好きなんだ?」

ときたもんです。なんだなんだ・・・メンバーで誰が好みなのか訊いてるのだろうか・・・?

「あ・・あの・・もうやめちゃったけど、市井沙耶香とか好きですね」

などと真剣に正直に返答した。するとオッサン。

「ワシは、安部なつみが好きでのぅ」

などとオッサン、自分の好みを言い出す始末。ナッチ派ですか。既にこの瞬間から、二人は立場の差を忘れ、同じアイドルマニアとしてのブラッドを感じ取り、盛り上がり始めていました。

加護のこれからのポジションですとか、福田明日香復活の是非。後藤はソロでやるべきなのか、だとしたらナッチの立場は?などなど、いやぁオッサン詳しいわ。

そしてバスも目的地に到着し、 オッサンは

「今日はモー娘。のDVDでも買って帰るかのぅ」

などと、言い残して消えていきましたとさ

いい年して、オッサン・・・アイドル好きは卒業しなよ
そう思わせる出来事でした。

アイドル好きの絆は立場すらも超える。

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