今日は日記二本立て!
一本目 時間と共に
月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして
(月は昔の月ではないのか。春は昔の春ではないのか。私の身一つだけはもとのままであるのに、すべては移ろい行ってしまい、あの人もいないのだ。)
女と恋した日々に思いを馳せ、一年後に同じ場所に行ってみたが、月は昔の月ではなかったし、春も昔の春ではなかった。ただ一つ自分の身だけは昔のままなのに 全ては移ろいいってしまい、恋したあの人もいないのだ。男は泣きながら帰っていった。
さて、↑の歌にありますように、時間と共に移り行く環境というのは、はたと立ち止まって考えてみますと切なく悲しいものであったりします。往々にしてこういった状況は私の場合多いのですが、やはり目まぐるしく変化する周囲に対し、何一つ成長していない自分というのは情けなく感じるものです。そもそも、この歌は恋したナオンが既にいないと悟って悲しくなったという意味があるのですが、いつの世も男はこのように女々しく、しおらしいものであると思うのです。
私自身の話を書きますと、非常に女々しくてイヤなのですが、まあ日記のネタのためなら仕方ありません。
中学生時代に付き合った彼女に何故か下着(使用済み)を貰ったと言う話は何処かで書いたと思うのですが、その彼女とは音信普通になっていました。まあ、お互いが違う高校に入りましたしね。ガキの恋愛なんてそんなもんですよ。でも、数年前、偶然にも街で彼女に会ったのです。お互いに20を超え、大人と呼べるような年齢になってからの再会です。彼女はビックリするぐらい綺麗になっていました。イイ女ってヤツです。それに引き換え、僕はといいますと、オタク一直線でして、もうロリコン街道まっしぐら、変態青年でした。明らかに不釣合いです。二人で軽く喫茶店に行き、思い出話に花が咲きました。昔あった楽しい出来事。喧嘩した時のこと、修学旅行のときのこと。 楽しい時間でした。例え今は不釣合いな「美女とオタク」でも、相変わらず僕の中では変わらず彼女は中学生の時の彼女のままなのです。
楽しく笑ってくれた彼女の笑顔
ちょっとすねてみせる彼女の顔
泣きながら仲直りした彼女の顔
高校合格を二人で喜んだあの日
笑顔で下着を差し出してきた彼女の姿
全てが遠くて近い思い出でした。何も変わらずあの時のまま大人になった二人。そんな錯覚さえ覚えるほどに。
僕は、なにげに下着の話を切り出しました。
「なあ、何であの時下着をくれたんだい?」
ちょっと二枚目に聞いたつもりです。
「あの時は・・・友達の間で・・・・流行ってたの・・・・彼氏に下着をあげるのが・・・・まさか・・・まだ持ってるとかじゃないよね?」
「まさかあ、持ってるわけないだろ、とうに捨てちまったよ、ハハハハハ」
僕の乾いた笑いが店内にこだまします。滝のように汗が流れてきました。
ええ、まだベットの下にあります。大切に保存してあるんです。
しかし、下着の話に照れ笑いを浮かべる彼女を見て、僕はある考えに至りました。
もしかしてコイツはまだ俺に気があるのでは
と、ええ、バカな話です。こんなにイイ女になった彼女を昔の思い出を餌に釣ろうなどと、ムシが良すぎます。
しかし、ダメで元々、成功したらもうけもの。なにより彼女自身が僕への思いを引きずっているのならそれに答えてあげなくてはいけません。意を決して僕は彼女に言いました。
「なあ、今、もう一度、君の履いてる下着を俺にくれないか」
二枚目に言ったつもりです。
「最低!」
彼女は怒って帰ってしまいました。それ以来、また音信普通です。
何が悪かったのでしょうか・・・・。
彼女はもう昔の彼女じゃなかったということでしょうか。
全ては時間の流れと共に変わってしまった。
二人で話していても、もう昔の二人ではない。
彼女もあの頃の彼女ではないのだ。
ただ一つ変われないでいる自分がいるだけで。
月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして
この歌を口にしながら、昔くれた下着を眺め、その夜は泣きました。